株価暴落時に絶対やってはいけないこと

長期的な視点で国際分散投資による資産運用に取り組んでいる投資家であっても不安になり、
売却することを検討したり、金融機関の営業担当者が一旦売却しておくことを提案することも増えているようです。

しかしながら、「運用資産を売却して運用をやめてしまうこと」は
今回のような暴落局面で絶対やってはいけないことだと考えます。
積立投資による資産形成に取り組む人が「積み立てをやめてしまうこと」も同様に絶対避けるべきです。

今回は株価が暴落していてもなぜ資産運用をやめてはいけないのかまとめてみます。

過去にも○○ショックと言われる株価が急落する局面は何度もありました。
オイルショック、バブル崩壊、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、リーマン・ショックなどです。
いずれも1,2年かけて3割から4割下落しています。
リーマン・ショック時は50%近く下落し、元の水準まで戻るのに5年近くかかりました。
ここで重要なことは、多少の時間がかかっても元の水準を回復しその後さらに成長し続けたという事実です。
長期的には回復すると頭では分かっていても、人間の心は弱いものです。
その怖さに耐えられずに売却して運用をやめてしまう人が多くいます。

そして、資産運用においてリターンを獲得するためには『市場に居続けること』が大切です。

バンガード社のレポート『終わりのない弱気相場はない』
https://mail.omc9.com/l/01XqS2/qEviey6B/
にも以下のような分析があります。
「2000年から2018年にかけて、米国株式(S&P500)は年率4.86%のリターンを実現していたが、
同期間中で最もリターンの高かった10日間を除くと、わずか年率1.10%のリターンだった。」
逆に言えば、その10日間だけ市場に居れば(投資をしていれば)
ごく短期間に莫大な利益を得ることができることになります。
しかし、それがいつなのかは事前には絶対にわかりません。
だからこそ、ずっと持ち続ける(市場に居続ける)ことがとても重要になります。

一方で、こういった場面でも売却しなくてはならない状況があるとすると、
今後5年以内に必要となる資金まで投資してしまっている場合くらいだと思います。
時間をかければ回復する可能性が高く本当は売らない方が良いのにも関わらず、
売却しなくてはいけなくなるのは最も避けたい事態です。
そのためにも、資産運用に取り組む際にはライフプランを整理して個人の将来キャッシュフローを
しっかり把握することで投資可能な資産を明確にしておくことが重要になります。

株価急落局面における資産運用のポイント

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、世界中の株式市場が大きく下落しています。
そこで、今回は「〇〇ショック」と呼ばれる株価急落局面への対応法について整理していきます。

まず、現状を正しく把握する必要があります。
メディアの報道には、バイアスがかかりがちで、どうしても過剰に見せたがる傾向があります
例えば、株価の急落を「NYダウ1400ドル急落、過去最大の下落」と報じます。
あたかも史上最悪かのような印象を与えますが、下落率は5%程度ということもあります。
下落レベルは実数字ではなく、比率(%)で測るべきです。
下落の金額が大きくなるのは、これまで上昇してきたからで、
同じ比率(%)でも水準が高くなれば、数字での変動幅が大きくなるのは当然です。
もちろん5%の下落も大きな下落ではありますが、
年に何度か発生する下落率であり過度に恐れる必要はありません。

一方で、1ヶ月で2割以上下落する局面は年に何回もあるわけではありません。
今後の新型コロナウイルスの広がりや経済への影響について容易に判断できませんが、
短期的には企業業績が悪化し景気が悪くなることは間違いなさそうです。

しかしながら、相場の先行きを予想して運用方針を変える必要はないと考えています。
短期的なリターンを追求して売買を繰り返すような投資スタイルであれば、
色々と対応しなくてはいけない局面だと思いますが、
分散投資を徹底しながらリスク管理をしっかり行い資産価値の上昇から
長期的なリターンを追求していくスタイルであれば、やることは変わりません。
最長で5年くらいは相場が回復せずマイナスが続いても問題ないように投資額を増やし過ぎず
手元資金を確保できていれば、当初の投資方針に沿って運用を継続するだけです。

こういった急落局面で絶対にやってはいけないことがあります。
それは、評価額の下落に怖くなり運用をやめようと売却してしまうことです。
「当面回復は期待できないし、まだまだ下がるだろうから一旦売却しておいて、
安くなったところで買い戻そう」と考える人もいるかもしれませんが、それもお勧めできません。
多くの人は買い戻すタイミングを逃してしまい、市場回復局面でのリターンを得られないだけでなく、
何もせずに保有し続けた場合よりも少ないリターンしか得られません。

そして、積立投資により資産形成に取り組んでいる場合には
積立を停止してしまうことも絶対に避けておきたいことです。

リスクをコントロールしながら長期的に成長が期待できる資産へ投資しているのであれば、
何も変える必要はないということです。
コロナ問題もいずれ収束するのは明らかです。短期的には景気が後退しても、
世界全体でみれば成長は続き、株価はいずれ回復すると考えられます。

逆に、こういった急落局面でやっておいた方がいいこともあります。
株価下落に備えて余力を残して取り組んでいた場合には、追加投資を検討しましょう
積立によって定期的に運用資産を積み増している場合には
積立金額を増額することを検討しても良いかもしれません。
ただし、2割程度の下落は数年に1回程度は起こることなので、
一気に増やし過ぎないことがポイントです。
数年の運用経験しかない人は一気に追加投資したくなるようですが、
2割程度の下落は絶好の投資チャンスというわけではありません。

さらに、下落率が大きくなり直近の高値から3割、4割と下落が大きくなっても
更に追加投資できる余力を残しておくことが大切です。
4割程度の下落までくれば、思い切って投資額を増やしてもいいかもしれませんが、
そこまでくるとビビッてしまって決断できなくなる人が多いように思います。

市場環境が好調な時は誰でもリターンが得られますが、
現在のような調整局面での対応によってその後の投資成果は大きく変わってきます。
過度に恐れることなく、冷静に淡々と資産運用に取り組むことをお勧めしています

FD宣言を公表し金融庁へ提出しました

2020年3月12日

フィデューシャリー・デューティー宣言

株式会社リンクマネーコンサルティングは2014年9月の設立以来、金融商品の販売には一切関わらずにお客様の最善の利益を実現することを最優先に考えて「誠実に」「正直に」 相談業務に取り組んで参りました。

金融商品取引業者として高度の専門性と職業倫理を保持し、各分野の専門家にアドバイス内容を検証していただいても納得してもらえるだけの正確性と質の高いアドバイスを提供してきたと自負しています。

日本で活動する多くの資産運用アドバイザーが「中立性」や「独立性」を謳いながらも金融商品の「販売者側」であり、顧客にとっての最善のアドバイスを提供できていない現状があります。コスト負担の大きい金融商品やサービスを利用するよりも、公的な制度を活用しシンプルな資産管理に取り組んだ方が多くの生活者にとってメリットがあると考えます。そして、長期的な視点で合理的・効率的な資産運用に取り組むためのアドバイスを提供しています。

弊社では金融庁が 2017 年 3 月 30 日に公表した「顧客本位の業務運営に関する原則」を全て採択し、取組方針を策定・公表いたします。

 

【原則1】顧客本位の業務運営に関する方針の策定・公表

(1)弊社は、お客様の最善の利益のために、お客様側の立場に立ち、高い専門性と倫理観をもって相談業務(コンサルティング)を行います。

(2)弊社は金融商品や不動産など投資商品に類するものを販売しません。紹介料など手数料(コミッション)に類似するものは一切受け取らず、相談業務(コンサルティング)や情報提供の対価として、合理的水準での相談料・顧問料(フィー)のみを報酬とします。

(3)当該方針や取組状況を公表し、必要に応じて方針の見直しを行います。

 

【原則2】顧客の最善の利益の追及

(1)弊社は金融機関から「独立」し、全ての金融商品提供会社に対して「中立」の立場を維持します。特定の金融機関や金融商品に拘らずに、お客様にとって最適な金融商品やサービスを選択できる体制を構築しています。

 

【原則3】利益相反の適切な管理

(1)弊社は金融商品販売に関わる手数料や紹介料を受け取ることはありません。

一定のコンサルティング報酬をお客様より直接受領することで、「お客様の最善の利益」のみを追求できる体制があります。必要以上の金融商品の利用をお勧めすることはありません。

(2)お客様の意向に沿ってコストを抑えた良質な金融商品の利用を提案します。

お客様との利益相反が発生する可能性を最小化することが、弊社では創業以来最も重視して取り組んできた課題になります。

 

【原則4】手数料等の明確化

(1)FP(ファイナンシャル・プランニング)業務と投資助言業務による報酬を明確に区別して料金体系を策定しています。FP業務はプランニングの対価として一律の固定報酬を設定し、投資助言業務においては個別具体的な金融商品の選定や投資判断を提供する対価として契約資産額に連動する報酬としています。どちらも事業継続に必要な合理的報酬であると考えています。

(2)料金体系やサービス内容についてはホームページで公開し、誰もがいつでも確認できるようにしています。そして、サービス利用を検討しているお客様には必ず対面で説明を行い、ご納得いただけたお客様とのみ契約を進めるようにしています。

(3)弊社では金融商品販売に関わる手数料や紹介料を受け取りません。また運用業でないため、お客様の運用に関わる資金を直接お預かりすることはありません。

 

【原則5】重要な情報の分かりやすい提供

(1)相談業務(コンサルティング)において、お客様の疑問や不安に丁寧に回答し、どのような些細なことでも質問できるような関係構築に努めます。そして、重要な情報を正確に分かりやすくお伝えします。

(2)重要な情報とは次の通りです。

金融商品・サービスを利用するメリット、デメリット、リスク、想定される最大損失額、負担する報酬や手数料など

 

【原則6】お客様にふさわしいサービスの提供

(1)弊社では「コンサルティング申込書」により、お客様の資産状況、取引経験、資産運用意向、ファイナンシャル・ゴール、コンサルティングを希望する理由を事前に確認し相談業務を行っております。

(2)金融商品に関する助言については、お客様の投資経験や金融理解度を慎重に判断したうえで個々の事例に応じて、最適と考えられる金融商品の選択を支援します。

 

【原則7】従業員に対する適切な動機づけの枠組み等

(1)弊社ではお客様との利益相反が発生する可能性を最小化することに創業以来取り組んできました。今後も金融商品販売に関わる手数料や紹介料を受け取ることはありません。

従業員が「顧客の最善の利益」のみを追求できる事業構造になっており、お客様の経済的自立を支援するために相談サービスを提供していきます。            以上

資産運用の終わらせ方(出口戦略)

資産運用は「始めることよりも終わらせることの方が難しい」といわれます。
自分の老後に備えて投資信託などを買い続けてきたものの、
資産の売却についてはタイミングや方法がよくわからないという相談を受けることが多くあります。
そこで、今回は資産運用の終わらせ方(出口戦略)について整理していきます。

投資スタイルによっても資産運用の終わらせ方は大きく異なります。
長期的な価値の上昇が期待できずに、どこかで全て売却し清算した方がよい投資対象も多くあります。
一方で、私がお勧めしている
「長期的に価値が増えていく資産に時間をかけて投資していくスタイル(長期の国際分散投資)」であれば、
資金を使う時期が近づくまでずっと運用を続けていくことでも問題ありません。
ご自身で使いきれない場合には運用したまま次世代へ引き継げば良いのです。

では、老後に使う予定の資産を運用している場合はいつ売却したら良いのでしょうか。
できるだけ高い時期に売りたいと考えるのは当然のことですが、
株価下落後の最安値で投資することが難しいのと同様に、
ベストなタイミングを見極めることは不可能です。
もう少し上昇するだろうと期待して待っている間に反落してしまうことや、
もうそろそろピークではないかと売却してしまうと更に上昇が続いてしまい後悔するということはよくあります。

そこで大事になってくるのが「売却の時間分散」です。
投信積立サービスなどを利用して定期的に運用資産を積み上げていくのと同じように、
時間をかけてタイミングをずらしながら売却していきます。
ただし、そのためには将来の家計キャッシュフローを把握して
「いつ」「どのくらい」の資金が必要になるか整理しておくことが不可欠です。
想定外の事態の発生などに備える一定の流動性資金を確保しながら、
資金が必要となる時期に合わせて、運用資産を少しずつ解約していくということです。

具体的には、資金が必要になる5年くらい前から徐々に売却を始めるのがよいと考えます。
これは大きな金融危機が発生してしまうと回復するまでに5年くらいかかってしまうこともあるからです。
解約するタイミングは、半年に1度や1年に1度の頻度でも問題ありませんし、
毎月少しずつということでも構いません。

時間分散しながら売却を進める方法は3つあります
1.定量売却
2.定額売却
3.定率売却
「1.定量売却」は毎回同じ口数を定期的に売却します。
全てを売り切る時期を事前に確定できますが、毎回の売却金額は相場状況によって変動します。
「2.定額売却」は毎回、同じ金額が手元に入る点はわかりやすいですが、
相場変動によって売り切るまでの期間は伸び縮みします。
「3.定率売却」は資産残高の一定割合を定期的に取り崩していく方法です。
売却金額が徐々に減っていきます。

時間分散しながらの売却以外にも、配当金などを定期的に受け取りながら運用を継続する方法もあります。
現在の市場環境でもETF(上場投資信託)を活用することで3%前後の配当を定期的に受け取っていくことも可能です。

金融機関も定期売却など資産活用に関するサービス拡充には力を入れているようですが、
引き出すペース(期間)や金額、引き出した資金の利用目的によっても最適な方法は変わってきます
公的年金や企業年金、個人年金保険などの受取時期や金額を考慮しながら、
積み上げてきた運用資産をいかに活用していくか、資産運用の終わらせ方(出口戦略)を早めに計画し
効率的な資産管理に取り組むことで、トータルで活用できる資金の金額も増やしていけると考えています。

2020年の投資に対する考え方

2019年は年末にかけて国内外の株式市場が大きく上昇し、
海外株式市場は史上最高値を更新する水準にありました。
多くの株式市場が大幅下落する中で新年を迎えた1年前とは大きく異なる状況です。

弊社のお客様も投資した時期やリスクの取り方によってリターンの程度に差はありますが、
海外株式を中心に投資しているので、全員が運用資産の評価額を増やすことができた1年でした。
短期的な価格変動を受け入れ、将来的に成長していく可能性の高い資産へ投資しているのですから、
お金が増えるのはある意味当然の結果とも言えます。

2020年も引き続き日米欧の中央銀行は緩和基調の金融政策を続ける見通しです。
世界経済に明るい兆しもありますが、中東情勢の悪化は原油高や為替リスクの上昇の可能性を高め
株式市場にとって大きな波乱要因となりそうです。
今年は米国大統領選挙も控え、引き続き米中貿易協議の進展をにらんだ市場展開になると考えています。

しかしながら、いつもお伝えしているように、
相場の先行きを予想して運用方針を大きく変える必要はありません。
株価上昇による運用評価額の増加にも浮かれず、
心を落ち着けて当初の資産運用方針に沿って淡々と投資を続けていくことが重要です。

そして、市場環境のよい時ほどリスク許容度や全体の資金計画を確認しておくことをお勧めしています。
具体的には、以下の3つがポイントになります。

1.現在の投資総額から想定される最大損失額はいくらか、精神的に許容できる範囲内か。
2.ライフプランやキャッシュフロー計画に沿って、今後数年間に必要となる資金が確保できているか。
3.株式市場が大幅下落した時には追加投資できる余力が残っているか。

市場環境が悪化し株式市場の下落が続くと、投資計画の修正がしづらくなります。
株式市場が高値を更新するような時ほど冷静にリスクを取り過ぎていないか確認し、
取り過ぎているのであれば、運用資産を一部売却しておくなどの対応をしておく必要があります。

もし市場環境が変わっても基本スタンスを変える必要はありません。
分散投資を徹底しながらリスク管理をしっかり行うことで、どのような環境にも対応できると考えています。

市場環境が好調な時は誰でもリターンが得られますが、
調整局面での対応によってその後の投資成果は大きく変わってきます。
今年はより一層リスクコントロールの重要性が高まる1年になるかもしれません。

リバランスの方法と頻度

前回のブログでは、リバランスの必要性について書きました。

リバランスを定期的に実行するとリスクを一定にコントロールすることができて、
パフォーマンスの改善にもつながるとお伝えしました。

そこで、今回は具体的なリバランスの方法やどのくらいの頻度で実施したら良いのかまとめていきます。

  • リバランスの方法とは

リバランスの方法は大きく分けて3パターンあります。
方法1.値上がりした資産の売却(利益確定)+値下がりした資産の追加購入
方法2.追加資金により値下がりした資産の追加購入
方法3.値上がりした資産の売却(利益確定)

投資額をそれ以上増やしたくない場合は<方法1>、
手元に余裕資金があり、投資余力を残している場合<方法2>、
運用資産を取り崩しながら使っていきたい場合は<方法3>になるでしょう。
他にも売買に伴う手数料や税金の影響も考慮する必要があります。
最もシンプルで管理しやすく効率的なのは
<方法2>の追加購入のみによってリバランスをしていくことだと考えていますが、
どの方法も厳密に実行する必要はなく、状況に応じて組み合わせながら実行することで問題ありません。

  • どの位の頻度でリバランスをすべきか

リバランスを実施するタイミングについては2つの考え方があります。

1つ目は、年1回など一定期間ごとにリバランスします。
あらかじめ決めておいた時期に、運用状況に関わらず実行するため、感情に左右されず機械的な見直しが可能となります。

2つ目の考え方は、運用状況に応じて適宜リバランスをします。
例えば、「当初の配分比率から1割以上ズレが生じたらリバランスをする」などといった
基準を決めておき実行する方法です。
この方法では市場環境の変化に応じて迅速な調整が可能となります。

私は2つの方法を組み合わせて、
「1年に1回は定期的に実行し、それ以外にも2割以上のズレが生じたらその場合も実行する」
ということを基本的にはお勧めしています。

しかしながら、リバランスの頻度や方法にも絶対的な正解はありません。
資産運用は無理なく継続して行うことが極めて重要なので、
厳密に資産配分比率を維持することに拘りすぎない方が良いと考えます。

前回もお伝えしましたが、リバランスより大切なことは
ライフプランやキャッシュフロー(家計収支)の変化に応じたリアロケーション(資産配分比率の見直し)です。
5年に一度くらいは、金融資産全体に占める投資資産の比率は適切なのか、
運用資産の配分は効率的なのか確認することをお勧めしています。

リバランスの必要性

長期間にわたって資産運用を継続していくためには「リバランス」が必要と言われています。
そこで、今回はリバランスの必要性やどのくらい厳密に実行するべきなのかまとめていきます。

リバランスとは
株式やETF、投資信託の価格は日々変動しますので、時間の経過に伴う相場変動により、
資産運用を始めた当初に組んだ資産配分比率からズレが生じてきます。
このズレを解消するために、比率の高くなった資産を一部売却したり、比率の低下した資産を買い足したりすることで、
資産配分比率を元の配分に調整することをリバランスといいます。

なぜリバランスが必要なのか
リバランスが必要な理由は主に2つあります。
1つ目の理由は、リスクをコントロールするためです。
リスクを低減し安定的な資産運用に取り組むためには、
株式や債券などの異なる値動きをする資産に分散投資することが重要です。
しかしながら、最初にしっかりと資産配分を決めてポートフォリオを構築し分散投資をしても、時間の経過に伴い相場は変動するため、
保有する資産構成比に偏りが発生した場合には想定以上のリスクを取った状態になってしまったり、
反対に期待したリターン水準に達しないポートフォリオになってしまったりします。
資産運用において価格変動を避けることはできませんので、ズレが生じた資産配分を元の資産配分に戻し、
許容できる範囲内にリスク水準をコントロールするためにリバランスを実行する必要があります。

2つ目の理由は中長期的な投資パフォーマンス向上のためです。
異なる値動きをする資産に分散投資した場合、ある資産は大きく値上がりして利益が出ている一方、
他の資産は大きく値下がりしてしまう状況が起こり得ます。
この状況でリバランスを行うということは、値上がりした資産を売却して利益を確定し、
その資金で値下がりした資産を安く購入するということになります。
どの資産も右肩上がりに上昇し続けることはありませんので、定期的にリバランスを行うことで、
パフォーマンスを改善できる可能性が高くなります。

リバランスを忘れてしまったらどうなるか
リスクを適切にコントロールし、パフォーマンスを向上させるためにリバランスは必要ですが、
リバランスをしなかったとしても致命的な問題になるわけではないと私は考えています。
そもそも、当初決定した資産配分が絶対的に正しいわけではありません。
分かりやすさや管理しやすさを重視して資産配分を決定することもありますし、
前提となる期待リターンやリスクも専門家によって異なる水準を想定していることがあります。

リバランスより大切なこと
個人の資産運用においてリバランスより大切なことは、
ライフステージや資産状況の変化に応じたリアロケーション(資産配分比率の見直し)です。
資産形成に取り組む30~40代、収入も増えて資産構築も進んできた現役バリバリの50代、退職後のセカンドキャリアを見据えた60代では、
それぞれ資産運用において許容できるリスクの大きさも変わってきます。
保有する資産の規模やキャッシュフロー(家計収支)が変化しているのに
投資方針が同じままでは適切な資産運用ができているとはいえません。
それに、金利水準などのマクロ環境も変化している可能性があります。

数年間、リバランスをしなかったとしても人生を通じた資産運用にそれほど影響はありませんが、
5年・10年経過してライフステージや資産状況、マクロ経済環境が変化している場合には
現在の資産配分比率が適切かどうか確認して見直しを進めていくことは極めて重要になります。

資産運用で失敗してしまう3つのポイント

元プロ野球監督、野村克也氏の座右の銘として話題になった「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉があります。
(この言葉は野村氏の創作ではなく、松浦静山の剣術書『剣談』からの引用らしいです)

これを資産運用に当てはめて考えると、成功する方法は一様ではないし、ラッキーで上手くいくこともありますが、失敗するパターンには一定の法則があり、これをやるとだいたい失敗すると思われることは確実に存在します。

私もこれまで10年以上、資産運用に関する相談を受けてきましたが、上手くいっていない人や失敗してしまった人は、「失敗するべくして失敗している」ように感じています

そこで今回は、資産運用で失敗してしまう3つのポイントを整理してみます。

1.良い結果しか想像していない
最悪の場合にどのくらい損失が発生するのか把握しないまま投資している人が多くいます。
確実に成功する投資など存在しませんので、リターンが期待できるということは損失が発生する可能性もあるはずです。

営業担当者の言葉を鵜呑みにしているケースも多くありますが、営業担当者がリスクについて説明していたとしても、良いイメージだけが残っていて正確に想定される損失額を理解できていないで失敗することはよくあります。
まずは、最悪の事態を想定して発生する可能性のある最大損失額を覚悟しておくことが重要です。

2.コスト意識が低い
金融商品を組成し、提供する金融機関も営利企業です。
金融商品を紹介する営業マンもボランティアではありませんので、金融サービスを利用するには必ずコストがかかります。
しかしながら、日本では金融商品や金融サービスの利用に関するコストを意識しないまま投資をしている人が多くいます。
コストを開示していない金融商品やサービスも多くありますが、まずはその金融商品を販売する金融機関や担当者がどういった収入を得ているか意識することが重要です。

3.商品について理解していない
金融商品の仕組みを全て理解することは容易ではありませんが、だからといって理解せずに投資することはやはりお勧めできません。
仕組みが複雑で分かりにくい商品やリスクの所在と大きさが明確でない商品を避けるだけでも失敗は避けられます
金融リテラシーが高い人はシンプルな仕組みの商品を選り好んで利用しています。
仕組みを理解しにくいような複雑な商品はコストの高い粗悪品だと考えても問題ありません。

以上です。
資産運用で失敗するには必ず理由があります。
今回紹介した3つのポイントを抑えるだけでも、失敗するリスクは大きく減らせます。
約1年前のブログにも『金融商品を利用する際に理解しておくべき3つのポイント』について書きました。
関心があれば、こちらも併せてご確認ください。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/cE0ZNxup/