長生きリスクに備える「年金繰り下げ」の注意点とは

人生100年時代といわれています。

医療技術もさらに進歩していくことが予想され、想定より長生きした場合に備えておく必要性が高まっています。

どんなにお金があっても資産を取り崩していく生活には不安を感じる人も多いでしょう。

そういった長生きリスクに備えるには公的年金の繰り下げが有効です。

運用してお金を増やしておくことも大事ですが、それ以上に確実な対策となるのは公的年金の活用だと考えています。

そこで今回は年金繰り下げの考え方を整理していきます。

 

「老後2000万円問題」でも明らかになったように年金制度を正しく理解していない人が非常に多いようです。

公的年金は老後の生活資金のベースです。

確かに人によってはそれだけでは不十分だと感じると思いますが、

メディアが報じるほど日本の年金制度は悪くありません。

制度が破綻することは有り得ないですし、そして、何よりも自身の選択次第で金額を増やしたり、

個人のライフプランに応じてカスタマイズ可能な仕組みになっています。

 

「繰り下げ受給」とは、年金をもらい始める時期を遅らせる代わりに年金額が増える仕組みですが、

選択できる年齢が75歳まで延長される予定です。

受け取り開始を1ヵ月遅らせると、年金額が0.7%増えます。

仮に75歳まで遅らせると年金額は原則である65歳開始に比べて84%増えます。

税金や社会保険料への影響も考慮する必要はありますが、

1.84倍に増えた年金を死ぬまで受け取れるというのは非常に大きなメリットです。

 

ただし、繰り下げ受給には注意点もあります。

 

1つ目は、「損益分岐」の時期です。

受給を遅らせている間に受け取らなかった分を取り戻すには、

増えた年金を何年もらい続ければいいのかを計算すると11年11カ月。

70歳からもらい始めるなら81歳11カ月、75歳からなら86歳11カ月まで生きると元が取れます。

しかし、年金額が増えると税金や社会保険料、医療費の自己負担も増えてしまうため、

実質的には元が取れるまでに15年くらいかかるケースもあります。

 

2つ目は、「加給年金」です。

これは一定の条件を満たす年下の配偶者がいる場合に上乗せされる約39万円の年金です。

加給年金は厚生年金を繰り下げると消えてしまいもらえません。

対策としては、繰り下げる年金を基礎年金部分だけにすれば、加給年金を予定通り受け取ることが可能です。

 

3つ目は、「在職老齢年金」との関係です。

在職老齢年金とは年金をもらいながら働くと就労形態や収入額によっては年金が削減される制度です。

この対象者は繰り下げの効果が薄れてしまいます。

 

4つ目は、「遺族年金」との関係です。

配偶者の死亡後に受け取る遺族年金は65歳時点の年金額を基準に計算するため繰下げで増えた分は反映されません。

また、配偶者の年金額が大きい場合には遺族年金の受給権発生によって自身の繰り下げが無駄になってしまう可能性もあります。

 

5つ目は、受給開始年齢は後から決められることです。

事前に何歳から受け取り開始するか決めないといけないと勘違いしている人もいますが、

その必要はありません。

65歳を過ぎても手続きをせずにいて、例えば68歳になった時点で年金を受け取ろうと考えた場合、

3年分(25.2%)増額された年金額をそれ以降ずっともらうか、

増額はされないけれども3年分を遡って一括でもらうか選択することができます。

 

以上のように年金繰り下げについては注意点も多くありますが、

終身でずっと受け取れる収入源を確保しておくことは安心に繋がります。

十分な不動産収入や配当収入を確保できればそれに越したことはありませんが、

投資にはリスクも伴いますし、資産管理の負担もゼロではありません。

公的年金を中心とする社会保障制度を上手く活用する方が長生きリスクへの備えとしては安心だと考えます。

 

株価高騰時における資産運用の注意点

 

日経平均株価も約30年ぶりに3万円台に回復し、引き続き世界の株式市場が堅調に推移しています。

そこで、今回は株価高騰時における資産運用の注意点を整理しておきます。

「コロナ禍に苦しむ実体経済と株式市場の現状には乖離がある。今の株価高騰はバブルだ、近いうちにはじけるのではないか」と考えて一旦利益確定のために売却しておこうと考えてしまうことはよくあります。

他にも「一旦売却しておいて、安くなったところで買い戻そう」と考える人もいるかもしれませんが、それもお勧めできません。

さらなる価格上昇により買い戻すタイミングを失い、何もせずに運用を継続した場合よりも少ないリターンしか得られないことがよくあります。

このように相場予想に基づく売買は上手くいかないことが多く、エコノミストなど経済予想の専門家ですら短期的な市場予想は当たらないのですから、個人の長期的な資産運用においては相場予想によって投資方針を変える必要はないと考えます。

売却するかどうかは個人資産全体のバランスとキャッシュフロー(CF)計画次第です。

当初より長期的な資産成長に期待して運用に取り組み、CF計画が変わっていないのであれば、どんなに株価が上昇しても淡々と運用を続けることをお勧めします。

もし仮にバブルであったとしても、そういった議論が始まってからさらに長く上昇を続けることが多いという歴史的事実もあります。

株価が一本調子で上がり続けることはありませんし、いつかは必ず調整(=下落)しますが、

それは更に大きく上昇した後かもしれません。

したがって、早すぎる利益確定によりキャッシュポジションを大きくしすぎない(預金資産の比率を高め過ぎない)で、マーケットに居続けることが重要です。

売却しなくてはいけない状況があるとすると、今後5年以内に必要となる資金まで投資してしまっている場合くらいです。

時間をかければ回復する可能性が高く本当は売らない方が良いのにも関わらず、資金が必要になり売却しなくてはいけなくなる事態を避けるためです。

したがって、株価高騰時にやっておくべきことは、今後必要となる流動性資金が確保できているか、リスクを取り過ぎていないかを再度確認しておくことくらいでしょう。

ライフプランを整理して個人の将来キャッシュフローをしっかり把握することで投資可能な資金を明確にしておきます。

そして、金融危機などにより株価が大暴落した場合に発生する最大損失額を把握して、それでも経済的にも精神的にも落ち着いていられるかがリスクを取り過ぎていないかのポイントです。

流動性資金と運用期間が確保できていれば、どんなに株価が高騰しても運用方針は変える必要ありません。バブルは結構長く続くかもしれませんし、相場の先行きは予想できないと割り切って、無理し過ぎず淡々と資産運用を続けていきましょう。

 

2021年の投資に対する考え方

2020年はこれまでにない異例の1年となりました。

日経平均株価の終値も1989年以来の高値となり米国の株式市場も歴史的な急騰が続き、

連日史上最高値を更新していました。

 

弊社のお客様は3月以降の下落局面で追加投資を実行できた方が多く、

ほぼ全てのお客様が運用資産の評価額を増やすことができた1年でした。

短期的な価格変動を受け入れ、将来的に成長していく可能性の高い資産へ投資しているのですから、

お金が増えるのはある意味当然の結果とも言えます。

 

2021年も株式市場を取り巻く環境は悪くなさそうです。

主要国の金融緩和政策は維持され、財政出動による経済対策も適宜発動される見通しです。

新型コロナに収束の目途は立っていませんが、ワクチン普及の実現性が増していることが支えとなり、

経済活動の正常化は一進一退を繰り返しながら時間をかけて進むと想定されます。

 

しかしながら、いつもお伝えしているように、

相場の先行きを予想して運用方針を大きく変える必要はありません。

株価上昇による運用評価額の増加にも浮かれず、

心を落ち着けて当初の資産運用方針に沿って淡々と投資を続けていくことが重要です。

 

評価額の上昇により、一旦売却して利益を確保しておきたいとの衝動もよく理解できますが、

現状の市場環境でキャッシュポジション(個人資産全体に占める現預金の比率)を大きくし過ぎることはお勧めできません。

世界的な株価上昇は、現金や通貨の価値が下落していることも要因の1つと考えられるからです。

ビットコインなど暗号通貨の上昇も同様の理由で説明できます。

 

金融緩和政策の継続、財政出動による経済対策が進められるうちは

バブル崩壊や大幅な下落は考えにくいと思います。

 

新年を迎えたこのタイミングでやっておくべきことは、個人資産全体の資金計画やリスク許容度の確認でしょう。

具体的には、以下の3つがポイントになります。

 

1.ライフプランやキャッシュフロー計画に沿って、今後数年間に必要となる資金が確保できているか。

2.現在の投資総額から想定される最大損失額はいくらか、精神的に許容できる範囲内か。

3.株式市場が下落した時には追加投資できる余力が残っているか。

 

市場環境が悪化し株式市場の下落が続くと、投資計画の修正がしづらくなります。

株式市場が高値を更新するような時ほど冷静にリスクを取り過ぎていないか確認し、

取り過ぎているのであれば、運用資産を一部売却しておくなどの対応をしておく必要があります。

 

先行き不透明な時代において、ライフプランやキャッシュフロー計画を定期的に見直しながら資産運用に取り組む重要性が高まっています。

 

 

投資信託売却の考え方

今月に入り日経平均株価は約30年ぶりの高値を更新しました。

米国株式市場も史上最高値圏にあり、投資信託を利用して資産運用に取り組んでいる

投資家の多くは保有資産の評価額が上昇し儲かっている状況にあります。

株価上昇を受けて保有資産の評価額が上昇してくると、

「投資信託を売りたい」といった相談を受けることがあります。

そこで、今回は投資信託の売却に関する考え方を整理しておきます。

 

結論から言うと、

相場状況での売買判断はほとんど必要ないと考えています。

もちろん、運用方針にもよりますし、投資対象にもよります。

個別株やテーマ型の投信で運用している場合は

どこかで売却して利益を確保しておいた方が良いでしょう。

 

一方で、当初より長期的な資産成長を期待して投資しているファンドについては、

個人の運用方針が変わっていないのであれば、相場状況による売買判断は不要です。

売却するとしても微調整くらいに留めておくべきだと考えます。

 

確かに、どんなに評価額が上昇していても売却しない限り利益は確保できません。

一旦、売却して利益を確保しておきたい衝動に駆られることもよく分かります。

 

金融機関の営業担当者であれば、

一旦売却して利益を確保しておくことを提案するでしょう。

しかし、それは次にまた別のモノに投資する際に手数料を獲得できるチャンスがあるからです。

長期で運用できる売却資金を預金に置いておいてもリターンは期待できませんので、

機会損失が発生します。

必ず次の投資タイミングをうかがう必要がでてきますが、

結果的に売却した時期より高くなってから再度投資するようなケースも実際には多いのが現実です。

 

では、売却についてどのように考えておくのが良いのでしょうか。

積立投資により運用資産を積み上げていくのと同様に、

時間分散をしながら計画的に売却していくことを私はお勧めしています。

 

具体的には、家計キャッシュフロー(CF)の推移や退職時期などのライフプランを整理して、

いつから運用資産を取り崩していくのか考えます。

資金が必要な時期から逆算して準備していくということです。

 

今年の3月のように相場が急落したタイミングで追加投資のペースを引き上げたり、

待機していた資金から追加投資することは有効です。

それと同じように、明らかにバブルが膨らんでいて上がり過ぎている状況であれば、

運用資産を一部売却して手元資金を多めに確保しておくことをお勧めすることはありますが、

今はまだその状況にないと考えます。

 

手元資金が少なくなっているのであれば、

一部売却して利益を確保しておくのが良いかもしれませんが、

市場動向は予想できないと考えておくべきです。

 

積立投資により継続的に運用資産を積み上げている場合は、

どんなに高くなっても運用期間(資金が必要になるまでの期間)が

10年程度確保できているのであれば、積立投資を淡々と続けることで問題ありません。

 

相場が急落した3月以降に積立ペースを引き上げてきた場合には、

積立金額を減額するか一旦停止しても良いかもしれませんが、

これも全ては、家計のキャッシュフロー(CF)と手元流動性資金をどの程度

確保しているかによって判断は変わってきます。

 

私がお勧めしているような長期的に成長が期待できる投資信託で運用している場合は

短期的に価格が上昇しても運用方針を変えて売却する必要はありません。

何か行動するとしても、手元資金を少し多めに確保するとか

積立投資金額を減額しておく程度がよいでしょう。

 

 

 

NISAロールオーバーの判断ポイント

2016年からNISA口座で運用をしている人は取引金融機関から

ロールオーバー手続きの案内が届いていると思います。

そこで、今回はロールオーバーの判断ポイントを整理します。

 

NISAで購入した投資信託や株式は売却益と配当に対する利益が5年間非課税となります。

5年の非課税期間が終了した後も翌年のNISA非課税枠へ移すことで、

再度5年間非課税で運用を継続することが可能です。

このような翌年のNISA非課税枠へ移す手続きを「ロールオーバー」と呼びます

ロールオーバーしない場合は自動的に課税口座(特定口座)へ移されて継続保有することになります。

非課税期間が経過しても勝手に売却されたり運用が終了することはありません。

 

非課税期間終了時に運用資産の評価額が120万円を超えていても全額ロールオーバーできるため、

新規で投資するよりも大きな金額を非課税で運用可能なのは大きなメリットです。

 

一方で、ロールオーバーには注意点もあります。

翌年の非課税投資枠を使うので、新規投資できる金額が少なくなります。

積立により継続的に追加投資している場合はNISAの非課税枠での積立がその分できません。

他にも、損益がマイナスの場合にロールオーバーせず課税口座に移してしまうと税負担が増加し、

実際は利益を得ていないのに課税されてしまうリスクが発生します。

 

では、ロールオーバーするべきかどうかどのように判断したらよいのでしょうか

個々人の状況によって判断は分かれますが、私は3つのポイントを判断材料にしています。

1.翌年に新たに投資する資金の大きさ

2.保有する銘柄(商品)

3.現状の評価額・損益状況

 

まずは、翌年に新たに投資する資金があるかどうかです。

2021年に追加投資(積立投資)をする予定がないのであれば、

ロールオーバーしておくべきでしょう。

2016年に投資した資産の評価額と2021年の投資予定額の合計が120万円未満の場合も同様です。

 

続いて、保有している銘柄(商品)の継続保有意向です。

今からでも非課税枠でさらに追加して投資したいと思える銘柄であれば、ロールオーバーします。

非課税運用に適した銘柄が他にある場合や

同タイプのインデックス・ファンドでさらに低コストの商品がある場合には

非課税期間終了後に切り替えるためロールオーバーせず一旦課税口座へ移します。

 

最後に、評価額と損益状況による影響を考慮します。

さらに低コストのインデックス・ファンドに切り替えたいと考える場合も

評価額が120万円を大きく超える場合はロールオーバーして非課税運用を継続することで

少しでも多くの資金を非課税で運用することが可能になります。

 

判断が難しいのは、NISAで保有する資産の評価額が120万円前後の状況でありながら、

新規の投資も予定しているケースです。

ロールオーバーによる継続保有分と2021年の積立投資のどちらに非課税枠を充当するのが合理的なのかは

相場次第なので絶対的な正解はありません。

年初に一括投資するのと積立による投資でどちらが高いリターンを得られるかは

相場展開次第であり、事前には誰にも分からないからです。

 

そもそも、一般NISAではなく「つみたてNISA」に切り替えた方がよいケースもあります。

「つみたてNISA」であれば、ロールオーバーするべきかどうかの判断も必要ありません。

非課税運用期間も長く、仕組みがシンプルで使いやすい制度になっています。

ネット証券の不正出金リスクについて

先日、SBI証券の顧客口座から総額約1億円の資金が

不正に引き出される事件が発生しました。

ネット証券はコストも安く、取扱商品やサービスが充実しているため、

効率的な資産管理には今では欠かせないツールになっています。

そこで、今回はネット証券のリスクや安全性について

どのように考えたらよいか整理してみます。

 

先月はドコモ口座による銀行預金の不正出金問題も発生しましたが、

この事件は主に地方銀行のセキュリティが脆弱な口座が利用されました。

実際にワンタイムパスワードやSMSによる二要素認証を導入していた

メガバンクなどでは被害が出ていないようです。

さすがに口座番号と4ケタの暗証番号だけで出金できてしまう設定には驚きましたし、

これでは不正に利用されるのもしょうがないと感じました。

 

一方で、SBI証券の不正出金事件には衝撃を受けました。

証券口座の出金先は本人名義の銀行口座しか登録できませんので、

仮に証券口座のIDやパスワードを盗み取られてしまっても

資金を他人名義の口座には出金できません。

したがって、銀行口座より証券口座の方が不正に引き出されるリスクは

圧倒的に低いと考えていたからです。

 

今回の事件は、本人の同意なくログインされ、

登録してある出金口座を勝手に変更され、

保有資産を売却し、出金された、というものです。

ログインIDやパスワードを盗んだうえで、

同姓同名の銀行口座を偽造する必要があることを考えると、

同様の事件が多発することは考えにくい状況です。

 

しかも、株式や投資信託の売却手続きをしてから

出金できるようになるまでには数日かかります。

その数日間の間に口座状況を確認すれば、異変に気付くこともできるはずです。

 

今回の事件をきっかけに出金先口座の変更手続きについては見直しもされていますし、

ネット証券口座からの不正出金を過度に恐れる必要はないと考えます。

 

ただし、便利なネットサービスを使う以上、

最低限のセキュリティ対策はしておいた方がよいでしょう。

最低限とはどの程度のことなのか難しいところですが、

私の意識している対策を簡潔にご紹介します。

・パスワードをPCなど端末に保存しない

・金融系のパスワードは他の会員登録などと別にする

・できるだけIDやパスワードの使い回しをしない

・推測されにくいパスワードを設定する(英字、数字、大文字小文字、記号などを組み合わせる)

・二段階(二要素)認証を設定する

・公共の端末、フリーwifiサービスで金融系サイトにログインしない

・不審なメールやURLにアクセスしない

 

私はネットセキュリティの専門家ではありませんので、

このような対策で十分なのかどうか分かりませんが、

少なくともこの程度の対策をしていれば、

仮に不正出金の被害にあっても金融機関が全額補償してくれます。

逆に言うと、最低限のセキュリティ対策をしていないと、

本人に過失があるとみなされて全額の補償を受けられない可能性があるため注意が必要です。

 

ちなみに、今回のドコモ口座とSBI証券の不正出金の被害については全額が補償されるようです。

 

 

ロボアドによる資産運用の限界

「ロボアド(ロボアドバイザー)」とは、
コンピューターのアルゴリズムに基づいて資産運用のアドバイスを行うサービスです。
年齢や収入、資産運用に対する考え方など簡単な質問に回答すると、
利用者に適したポートフォリオ(商品の組み合わせ)を提案し実際に運用もしてくれます。

日本では2014年くらいからスタートしたサービスですが、
ここ数年で急速に利用者数と運用残高が増えてきています。
そこで、今回はロボアドによる資産運用は有効なのか、
課題や限界はないのか
確認していきたいと思います。

金融機関で口座を開設し入金して商品を選んで投資を開始するこれまでのプロセスに比べると、
スマホやPCから手軽にすぐに資産運用を開始できます。
運用資産残高の1%前後の手数料はかかりますが、
資産の配分や定期的な組み換えなどを自動でやってくれます。

同じように一任型で大手金融機関に運用を任せる
「ラップ口座」という資産運用サービスにも似ていますが、
ラップ口座の手数料は年間2~3%のサービスが多いことを考えると、
ロボアドは低コストでそれなりの運用が期待できます
投資対象は海外の上場投資信託(ETF)など手数料の低い商品で
構成されているのも魅力の1つです。

年間1%の運用コストは安くはありませんが、初心者が金融機関で口座を開設し、
自分で資産配分を考え、商品を選択し売買手続きを行い、
定期的にチェックしていく手間を考えると許容範囲であると感じます。
金融機関の営業マンにまともなアドバイスが期待できない現状を考えると、
ロボアドの方が効率的に資産を増やせる可能性が高いでしょう。

ただし、ロボアドを使って資産運用に取り組むには課題もあります。
日本ではまだそれほど多くのサービスが提供されていませんが、
どのロボアドが優秀なのか利用者は的確に判断できるのでしょうか。
ロボアドの優劣を判断できるくらいの知識があれば、
自力で資産運用に取り組むこともできそうです。
初心者には「どのロボアドを使うのが良いのか」のアドバイスが必要になりそうです。

そして、ロボアドでの資産運用には限界もあります。
個人資産の中でどれくらいの金額を投資しても問題ないかはアドバイスしてくれません

将来必要となる資産を準備するために、
毎月の積立金額をいくらにしたらよいのでしょうか。
さらに、いつどのように運用を終わらせるのかのアドバイスも期待できません。

本来はライフプランや家計のキャッシュフロー計画に沿って
運用資産額をコントロールすることが重要です

必要となる資金を確保しながら、
すぐに使わない資金はできるだけ運用にまわすことが効率的な資産管理につながります。
ロボアドに任せた運用資産がいくら効率的にリターンを稼いでくれたとしても、
必要以上に預金に預けたままで運用に回る金額が少なければ、
個人資産全体の運用効率は悪くなってしまいます。

資産運用を始めたいと考えてはいてもなかなか始められていない人は
ロボアドを利用して、すぐに本格的な運用を始めることをお勧めします。
しかし、個人資産全体を効率的に管理し運用していくためのアドバイスまでは
期待できない
と認識しておくべきでしょう。

バランス型ファンドの限界

投資信託にも様々な種類がありますが、
昔から一定の人気を集めているタイプに「バランス型ファンド」があります。

バランス型ファンドとは、
1つの投資信託で株式、債券、不動産(REIT)など複数の資産クラスに投資している商品です。
1つの商品で、幅広い投資対象におまかせで分散投資ができるため、
リスクを抑えて安定的に資産運用していきたい人には悪くない商品だといえます。

特に自分でアセットアロケーション(資産配分)を考えたり、
複数の商品を組み合わせて管理していくことが難しいと感じる投資初心者には私もお勧めすることがあります。
資産運用を始めてみたいけど、情報収集する時間がなかったり面倒になって始められていない人には、
バランス型ファンドでさっさと運用をスタートすることには大きな意義があります

しかし、バランス型ファンドでの運用には限界もあるので多くの人はいずれ卒業することをお勧めしています。

その理由は3つあります。

<理由1>自分に適したバランスになっておらず高コストのファンドが多い
バランス型ファンドといっても、その配分比率はファンドごとにかなり異なります。
中には、リスクの高い地域の株式、不動産(REIT)だけでバランスさせた商品もあります。
バランス型といってもリスク分散が期待できず、単に組み合わせただけというものです。

一方で、国内債券比率が高過ぎてほとんどリターンが期待できないものもあります。
バランス型ファンドのバランスが自分にとって最適な比率と一致していないということです。

そして、運用コストが1%を超えるような手数料が高いものも珍しくありません。

<理由2>変化に対応しにくい
資産の運用は10年以上の長期にわたって続けることになりますが、
ライフプランや市場環境の変化に合わせた調整がしにくいのもバランス型ファンドの弱点になります。

運用を継続する間には結婚したり、子供ができたり、
退職したりライフステージが大きく変化していくことになります。収入も変動するでしょう。
本来はライフステージや資産の状況に応じて配分を調整していく必要がありますが、
そういったこともできません。
個人資産全体でバランスさせることが逆に難しくなるということです。

また、現在の低金利環境が10年後も続いているとは限りませんので、
マクロ経済の環境に合わせた調整も必要になるかもしれません。

<理由3>学びに繋がらない
バランス型ファンドはお任せで楽チンかもしれませんが、
資産クラスごとのパフォーマンスの違いは把握できません。
株式と債券の値動きの違い、国内と海外の違い、先進国と新興国の違いなどを
認識して運用資産を管理すると世の中の見え方も違ってくるでしょう。

初心者には取り組みやすいですが、
個人が自分に適した資産配分を考える機会を奪うことになりますし、何よりも学びに繋がりません。
本来は不動産など実物資産や家族の資産も考慮して個人資産全体の最適化を
模索していくことで効率的な資産運用に繋がります。

今回はバランスファンドの限界についてお伝えしましたが、
最終的には、バランス型ファンドにはデメリットもあることを認識したうえで、
まぁまぁ悪くない方法で手間ヒマかけずに資産運用したいならそれでOKだと思います。
繰り返しになりますが、高コストのバランス型ファンドだけは避けることをお勧めします。

金融資産での運用と不動産投資

年金対策、インフレ対策、生命保険代わり、節税など様々なセールストークを駆使して
不動産投資を勧める自称アドバイザーが増えているように感じます。

私も資産規模や投資方針によっては、
金融資産での運用と組み合わせて不動産投資に取り組むことをお勧めしていますが、
資産運用の基本はやはり金融資産への投資だと考えています。

その理由は主に以下の3つです。

1.流動性・・・・必要に応じて必要な分だけいつでも換金できる。
人生における想定外の事態にも柔軟に対応できます。

2.透明性・・・・情報が開示されている。取引価格が明確であり、法外な値段で取引されることがありません。

3.低コスト・・・・取引コストや維持コストが非常に安い。

(もちろん、金融資産への投資でもこれら3つの条件を満たさないものはたくさんあります)

そして、この3つの特徴は不動産投資には備わっていません。

不動産は売却に時間がかかることが多く、一部分だけ売却するというわけにいきません。
建築構造上の欠陥があるかもしれませんし、
妥当な取引価格を知ることができず法外な値段で売買させられているケースも多くあります。
売買取引や管理を自分でやるには手間がかかりますし、
専門家に任せれば相応のコストを負担することになります。
資産運用の基本となる分散投資がしにくいことも問題です。

このように、金融資産での運用と比較すると不動産投資にはデメリットとなる部分も多くありますが、
金融資産への投資だけでは期待しにくい大きなメリットが存在します

不動産投資ならではの具体的なメリットは主に3つです。

1.レバレッジ(借入の利用)
2.節税効果
3.CF(キャッシュフロー)

1.レバレッジ
借入を利用することで、少ない手元資金で大きな投資ができます。
投資効率を高めることにもつながります。
リスクがあっても大きく資産を増やしたい場合や
できるだけ早く短期間で効率的に資産形成をしたい場合には有効な手段になります。

2.節税効果
不動産事業を赤字にすることで、給与など他の所得と相殺させて税負担を軽減することが可能です。
相続対策としても非常に大きな節税効果が期待できます。

3.CF(キャッシュフロー)
インカム収入として家賃を受け取れるため安定的なCFが発生します。
ただし、金融資産での運用も配当や分配金などCF収入を確保する運用が可能であり、
多くの不動産は時間の経過とともに価値が低減していくことを考慮すると
CFが主な目的の場合には不動産投資の優位性は限定的です。

特に、レバレッジ(借入の利用)と節税効果は上手に活用することで非常に大きな効果が得られます
不動産業界は、あやしい不誠実な業者がかなり多いことも問題ですが、
しっかりとした情報収集と対策を講じることで不動産投資のリスクはある程度コントロール可能です。

実物資産である不動産を組み入れていくことを希望される場合には、
金融資産とのバランスに配慮して資産全体をどのように管理・運用していくか、
どういった目的で不動産を組み入れていくか、
多面的な視点から戦略を立てて取り組むことが重要
になります。

資産運用における為替ヘッジについて

長期的な資産運用に取り組むためには国内資産だけでなく、
海外資産にも分散投資を行う必要があります。
国内資産だけよりも海外の株式や債券に投資する方が高いリターンも期待できます。

国内の株式市場が為替の影響を受けやすいこともあって、
日本人の資産運用は為替相場によって運用結果が大きく変わってきます。
そのため、安定的な資産運用を実現するためには為替リスクのコントロールが重要になると考えています。

そこで、今回は為替リスクを低減する「為替ヘッジ」についてその効果や使い方についてまとめていきます。

資産運用の専門家の中には「多くの日本人は給料も日本円でもらい、
保有している不動産や貯金も円資産だし、将来の年金も日本円でもらうことになるのだから、
資産運用は海外資産でやればいい。為替リスクなんて気にせず、海外資産中心の資産運用がよい」
と言う人もいます。

確かに、この考え方には一理あります。
将来受け取る予定の給料、年金資産、すぐに運用に回さない預金を含めた個人資産全体のバランスを考慮して、
投資に回すお金は為替リスクのある資産を中心に行うという判断であればよいのです。

しかし、円高が進行して運用資産の評価額が下落してしまった時に、
「運用資産の評価は下落してしまったけど、自分の保有する円資産の実質的な価値が上がって良かった」
と考えられる人はほとんどいません。

実際には投資した資産の評価額の増減だけで判断してしまうのです。
だからこそ、まとまった資産を運用していく場合には為替のリスクを意識して
コントロールしておくことが重要
になります。

為替リスクを抑える方法はいくつかありますが、
もっとも簡単なのは為替ヘッジ付きの投資信託を利用することです。

為替ヘッジ付きとは、
将来為替相場がいくらになっていても「1ドル=〇〇円」で交換しますという為替予約の仕組みを利用して、
為替相場が大きく変動してもその影響を受けないようにしています。
円高によって評価額が下落するのを避けられますが、
円安が進んでも、本来海外資産に投資することで得られるメリットは受けられません。

そして、為替ヘッジ付きの投資信託はリスクを抑えられる代わりにヘッジコストがかかります。
具体的には国内金利と海外金利の差に相当するコストを間接的に負担することになります。
資産運用においてコストを抑えておくことは非常に重要ですが、
為替ヘッジのためのコストは負担するだけの十分なメリットがあります。

ただし、運用資産の中で、為替リスクのヘッジをどの程度しておくべきかは、
年齢や投資金額、運用方法によっても変わってきます

シニア世代が退職金などまとまった額を運用する場合には、
一定程度為替ヘッジ付きの商品を利用するのが妥当でしょう。
ひとたび円高が進んだら円安に戻るのを待つ時間的な余裕がないかもしれません。

一方で、これから資産を形成していこうと考える若年層は為替ヘッジの必要性は低いでしょう。
積立投資であれば円高進行時には多めの口数を買えて長期的に有利になる可能性があります。

他にも、十分な円預金を確保していて個人資産の中のごく一部の資金で投資していこうと考えている場合も
為替ヘッジ付きの商品を使う必要性は低いかもしれません。

最終的には、その時点の為替水準によっても為替ヘッジの意義も変わりますが、
リスクを抑えた安定的な資産運用を目指すのであれば、自身のポートフォリオのなかで、
為替相場の影響を受ける資産の割合を意識的にチェックして、
為替リスクを取り過ぎない方がよい
のではないでしょうか。