人生100年時代に欠かせない考え方「WPP」

最近、年金やライフプランの専門家の間で「WPP」という言葉が使われています。

これは人生100年と言われるこれからの時代に欠かせない考え方であり、私の資産管理についてのアドバイス方針とも一致するため、今回はこの「WPP」について紹介します。

 

WPPとは、「働けるうちはできるだけ長く働いて(Work longer)、私的年金(Private pensions)で中継ぎをし、最後は公的年金(Public pensions)で締める。」という考え方の頭文字をとっています。

日本年金学会幹事でもある谷内陽一さんが2018年の日本年金学会で発表したところ、同じような考えを持つ専門家が使い始めたそうです。

 

谷内さんによると、「かつて個人年金や企業年金などの私的年金は公的年金に『上乗せ』して、終身で死ぬまで受け取れる『先発完投』型が理想とされてきましたが、企業年金の終身タイプは普及していないし、個人年金も低金利が続いて商品性を維持できなくなっています。

そこで発想を転換し、個人の備えを5~10年の『中継ぎ』型と割り切れば自助努力の範囲が『見える化』され、『いくら用意すればいいか分からない』という不安は和らぐ」と説明しています。

長生きに備えて貯蓄を増やすのではなく、公的年金の繰り下げを活用するということです。

 

「年金繰り下げ」により公的年金の受取時期を遅らせるためには、その間の生活費を賄う資金が必要です。

そこで、企業年金や退職金、それまで貯めてきた貯蓄や運用資産を取り崩してキャッシュフローを補います。そして、最後は繰り下げにより増額した公的年金を終身で受け取ることで長生きリスクに備えます。

 

金融関係者は金融商品や金融サービスを利用することで長生きリスクに備えることを提案します。

資産寿命を延ばすためにも資産運用が必要だという主張です。

しかし、私はWPPの実践の方が人生100年時代に有効だと考えています。

資産運用の結果はどうしても不確実であり、しかも高齢期は判断能力の低下という問題への対応も必要になります。

 

資産管理について家族やアドバイザーのサポートが受けられれば問題ないかもしれませんが、日本ではアドバイザーを利用するという習慣も一般化していませんし、そもそもアドバイザーが足りていません。

 

寿命が分からない以上、老後に必要な資金額を事前に知ることはできません。

貯蓄を増やしたり投資で資産を増やすことも大切ですが、公的制度を上手に活用する方が高齢期の財産管理のリスクを低減しながら、確実に長生きに備えることができます。