投資信託が値上がりしても、投資家はそれほど儲かっていない?!

投資信託を評価する指標として「インベスターリターン」と呼ばれる指標が注目されています。

「インベスターリターン」とは、実際に投資信託を購入した投資家が得た平均的リターンを示します。
これに対して「通常のリターン」は投資信託の基準価格の騰落率であり、投資家の実際の売買とは無関係に計算されます。
ファンド運用者の腕前の比較評価に使うのは通常のリターンの方です。

当然ですが、投資家にとっては「インベスターリターン」が大事です。
株式市場がどんなに上昇しても、投資信託の価格がいくら上がったとしても、投資家が実際に儲からないと意味がありません。

しかし、残念ながら多くの投資信託は「インベスターリターン」が「通常のリターン」を下回っています。
つまり、投資信託の運用成績ほどは投資家個人は運用成果を得られていないということです。

ある有名な人気ファンドも運用開始以来のリターンは年率20%を超えているにもかかわらず、
「インベスターリターン」は4%程度しかありません。
(モーニングスター社のサイトなどで各ファンドのインベスターリターンは誰でも確認できます)

投資信託を利用するにあたり、「高値掴み」や「安値売り」をした人が多くいるほど、インベスターリターンは低下します。
本当は安い時に買って、高い時に売るのが良いに決まっているのですが、現実は、その逆になっています。
下がっている時に慌てて売ってしまい、上がっている時に乗り遅れまいと慌てて買うという投資家の非合理的な行動がパフォーマンスを大きく下げているのです。

私も15年ほど個人投資家の動向を直接見てきました。メディアの影響もあり、
多くの人が株価上昇によりピークに近づくころ頃に積極的に投資したくなり、相場が悪くなり株価下落が続いた局面で投資を止めようとします。

そして、手数料を稼ぎたい金融機関の営業姿勢がそれを助長します。
既にかなり価格が上昇していて更なる上昇余地が限定的であったとしても、目の前の販売実績に釣られて顧客の背中を押してしまいます。

下落局面では、不安になっている投資家に対して冷静な判断を促すよりも、
一旦売却して次の投資チャンス(=新たな販売手数料を稼ぐチャンス)に備えることお勧めしてしまうのです。

そして、市場回復が明確になり相応に値上がりした頃に再度投資をすることになります。
結果的には、何も売買せずに投資を継続していればより良いパフォーマンスになっていたケースが圧倒的に多いのですが、多くの人はそれにすら気付いていません。

人間は感情に流されてしまい非合理的な行動をしがちであることは行動経済学の分野で明らかにされています。
運用方針をしっかりと定めて、ブレずに淡々と運用を続けることが大切なのですが、
特に投資経験が浅い投資家にはそれはすごく難しいことかもしれません。
そんな時にこそ、客観的な立場から冷静に助言ができる資産運用アドバイザーの存在意義があるのではと感じます。