国際分散投資により長期的なリターンを期待して資産運用に取り組むと海外資産を中心に投資を行うことになり、為替相場の動向によって運用結果が大きく変わってしまいます。
そのため、為替相場の影響を抑えて安定的な資産運用を実現するために為替ヘッジ付きの投資信託を利用することもありますが、今年に入りその為替ヘッジコストが上昇しています。
そこで、今回は資産運用における為替ヘッジの考え方を改めて確認していきます。
為替ヘッジ付きとは、将来為替相場がいくらになっていても「1ドル=〇〇円」で交換しますという為替予約の仕組みを利用して、為替相場が大きく変動してもその影響を受けないようにしています。
円高によって評価額が下落するのを避けられますが、円安が進んでも、本来海外資産に投資することで得られるメリットは受けられません。
そして、為替ヘッジ付きの投資信託はリスクを抑えられる代わりにヘッジコストがかかります。
ヘッジコストとは、コストといっても金融機関が徴収する手数料ではありません。
外貨の短期金利と円の短期金利の差がベースとなっていて、それに各通貨の需給などの状況により発生する金利(ベーシス・スワップ・スプレッド)が上乗せされます。
昨年末に0.3%前後だった米ドルのヘッジコストは足元で1.7%台となっていて、今年に入ってから大きく上昇しています。
今回のヘッジコスト上昇の背景には、日米の金利差の拡大に加えて、世界の金融市場で米ドルの調達コストが上昇していることがあり、今後も日米の短期金利差の拡大に伴い、ヘッジコストが一段と上昇する可能性があります。
資産運用においてコストを抑えておくことは非常に重要ですが、為替ヘッジのためのコストは負担するだけのメリットがあります。
ただし、相応のコストを負担して為替リスクをヘッジしておくべきかどうかは、個人の年齢や投資金額、運用方法によっても変わってきます。
シニア世代が退職金などまとまった額を運用する場合には、一定程度為替ヘッジ付きの商品を利用するのが妥当でしょう。ひとたび円高が進んだら円安に戻るのを待つ時間的な余裕がないかもしれません。想定外の資金ニーズが発生する可能性もあります。
一方で、これから資産を形成していこうと考える若年層や相応の収入が期待できて投資余力の大きい投資家は為替ヘッジの必要性は低いでしょう。
積立投資であれば円高進行時には多めの口数を買えて長期的なリターンを高めることにもつながります。
他にも、十分な円預金を確保していて個人資産の中のごく一部の資金で投資していこうと考えている場合も為替ヘッジ付きの商品を使う必要性は低くなります。
最終的にはその時点の為替水準によっても為替ヘッジの意義は大きく変わりますが、リスクを抑えた安定的な資産運用を目指すのであれば、為替変動の影響を抑えておくことも有効な戦略になります。
リスクを抑えたいからといって全て為替ヘッジ付きの商品で運用するのは適切ではありませんが、個人金融資産全体の中で為替相場の影響を受ける資産の割合を意識的にチェックしバランスが偏らないように調整しておくことが大切です。