資産運用は「始めることよりも終わらせることの方が難しい」といわれます。
自分の老後に備えて投資信託などを買い続けてきたものの、
資産の売却についてはタイミングや方法がよくわからないという相談を受けることが多くあります。
そこで、今回は資産運用の終わらせ方(出口戦略)について整理していきます。
投資スタイルによっても資産運用の終わらせ方は大きく異なります。
長期的な価値の上昇が期待できずに、どこかで全て売却し清算した方がよい投資対象も多くあります。
一方で、私がお勧めしている
「長期的に価値が増えていく資産に時間をかけて投資していくスタイル(長期の国際分散投資)」であれば、
資金を使う時期が近づくまでずっと運用を続けていくことでも問題ありません。
ご自身で使いきれない場合には運用したまま次世代へ引き継げば良いのです。
では、老後に使う予定の資産を運用している場合はいつ売却したら良いのでしょうか。
できるだけ高い時期に売りたいと考えるのは当然のことですが、
株価下落後の最安値で投資することが難しいのと同様に、
ベストなタイミングを見極めることは不可能です。
もう少し上昇するだろうと期待して待っている間に反落してしまうことや、
もうそろそろピークではないかと売却してしまうと更に上昇が続いてしまい後悔するということはよくあります。
そこで大事になってくるのが「売却の時間分散」です。
投信積立サービスなどを利用して定期的に運用資産を積み上げていくのと同じように、
時間をかけてタイミングをずらしながら売却していきます。
ただし、そのためには将来の家計キャッシュフローを把握して
「いつ」「どのくらい」の資金が必要になるか整理しておくことが不可欠です。
想定外の事態の発生などに備える一定の流動性資金を確保しながら、
資金が必要となる時期に合わせて、運用資産を少しずつ解約していくということです。
具体的には、資金が必要になる5年くらい前から徐々に売却を始めるのがよいと考えます。
これは大きな金融危機が発生してしまうと回復するまでに5年くらいかかってしまうこともあるからです。
解約するタイミングは、半年に1度や1年に1度の頻度でも問題ありませんし、
毎月少しずつということでも構いません。
時間分散しながら売却を進める方法は3つあります。
1.定量売却
2.定額売却
3.定率売却
「1.定量売却」は毎回同じ口数を定期的に売却します。
全てを売り切る時期を事前に確定できますが、毎回の売却金額は相場状況によって変動します。
「2.定額売却」は毎回、同じ金額が手元に入る点はわかりやすいですが、
相場変動によって売り切るまでの期間は伸び縮みします。
「3.定率売却」は資産残高の一定割合を定期的に取り崩していく方法です。
売却金額が徐々に減っていきます。
時間分散しながらの売却以外にも、配当金などを定期的に受け取りながら運用を継続する方法もあります。
現在の市場環境でもETF(上場投資信託)を活用することで3%前後の配当を定期的に受け取っていくことも可能です。
金融機関も定期売却など資産活用に関するサービス拡充には力を入れているようですが、
引き出すペース(期間)や金額、引き出した資金の利用目的によっても最適な方法は変わってきます。
公的年金や企業年金、個人年金保険などの受取時期や金額を考慮しながら、
積み上げてきた運用資産をいかに活用していくか、資産運用の終わらせ方(出口戦略)を早めに計画し
効率的な資産管理に取り組むことで、トータルで活用できる資金の金額も増やしていけると考えています。