長期的な資産運用に取り組むためには国内資産だけでなく、
海外資産にも分散投資を行う必要があります。
国内資産だけよりも海外の株式や債券に投資する方が高いリターンも期待できます。
国内の株式市場が為替の影響を受けやすいこともあって、
日本人の資産運用は為替相場によって運用結果が大きく変わってきます。
そのため、安定的な資産運用を実現するためには為替リスクのコントロールが重要になると考えています。
そこで、今回は為替リスクを低減する「為替ヘッジ」についてその効果や使い方についてまとめていきます。
資産運用の専門家の中には「多くの日本人は給料も日本円でもらい、
保有している不動産や貯金も円資産だし、将来の年金も日本円でもらうことになるのだから、
資産運用は海外資産でやればいい。為替リスクなんて気にせず、海外資産中心の資産運用がよい」
と言う人もいます。
確かに、この考え方には一理あります。
将来受け取る予定の給料、年金資産、すぐに運用に回さない預金を含めた個人資産全体のバランスを考慮して、
投資に回すお金は為替リスクのある資産を中心に行うという判断であればよいのです。
しかし、円高が進行して運用資産の評価額が下落してしまった時に、
「運用資産の評価は下落してしまったけど、自分の保有する円資産の実質的な価値が上がって良かった」
と考えられる人はほとんどいません。
実際には投資した資産の評価額の増減だけで判断してしまうのです。
だからこそ、まとまった資産を運用していく場合には為替のリスクを意識して
コントロールしておくことが重要になります。
為替リスクを抑える方法はいくつかありますが、
もっとも簡単なのは為替ヘッジ付きの投資信託を利用することです。
為替ヘッジ付きとは、
将来為替相場がいくらになっていても「1ドル=〇〇円」で交換しますという為替予約の仕組みを利用して、
為替相場が大きく変動してもその影響を受けないようにしています。
円高によって評価額が下落するのを避けられますが、
円安が進んでも、本来海外資産に投資することで得られるメリットは受けられません。
そして、為替ヘッジ付きの投資信託はリスクを抑えられる代わりにヘッジコストがかかります。
具体的には国内金利と海外金利の差に相当するコストを間接的に負担することになります。
資産運用においてコストを抑えておくことは非常に重要ですが、
為替ヘッジのためのコストは負担するだけの十分なメリットがあります。
ただし、運用資産の中で、為替リスクのヘッジをどの程度しておくべきかは、
年齢や投資金額、運用方法によっても変わってきます。
シニア世代が退職金などまとまった額を運用する場合には、
一定程度為替ヘッジ付きの商品を利用するのが妥当でしょう。
ひとたび円高が進んだら円安に戻るのを待つ時間的な余裕がないかもしれません。
一方で、これから資産を形成していこうと考える若年層は為替ヘッジの必要性は低いでしょう。
積立投資であれば円高進行時には多めの口数を買えて長期的に有利になる可能性があります。
他にも、十分な円預金を確保していて個人資産の中のごく一部の資金で投資していこうと考えている場合も
為替ヘッジ付きの商品を使う必要性は低いかもしれません。
最終的には、その時点の為替水準によっても為替ヘッジの意義も変わりますが、
リスクを抑えた安定的な資産運用を目指すのであれば、自身のポートフォリオのなかで、
為替相場の影響を受ける資産の割合を意識的にチェックして、
為替リスクを取り過ぎない方がよいのではないでしょうか。