2024年の株式市場は日経平均株価が史上最高値の42,000円台まで一時上昇し、米国の株式市場は何度も史上最高値を更新しました。2025年はトランプ氏が米国大統領に就任し関税政策など世界経済にとって多くの不透明要因から金融市場は変動の大きな展開が予想されています。
しかしながら、いつもお伝えしているように、相場の先行きを予想して運用方針を大きく変える必要はありません。どんなに株価が高騰し短期的には株式市場が下落する可能性が高いとしても、当初の資産運用方針に沿って淡々と投資を続けていくことが重要です。
株式投資のリターンは企業の持続的な事業活動(=利益追求)から生まれます。世界経済が中長期的には拡大していく前提に立つと資産運用の大部分を占めるコア資産の運用方法を変える必要はありません。
一旦売却して利益を確保しておきたいとの衝動もよく理解できますが、相場下落時に首尾よく買い戻すことは至難の業です。また、現状の市場環境でキャッシュポジション(個人資産全体に占める現預金の比率)を大きくし過ぎることはお勧めできません。
生活費の高騰を多くの人が感じているように、現金や通貨の価値が下落するインフレが進行し続けるリスクも高まっているからです。
新年を迎えたこのタイミングでやっておくべきことは、個人の資金計画や保有資産全体バランスの確認でしょう。
具体的には、以下の3つがポイントになります。
1.ライフプランやキャッシュフロー計画に沿って、今後数年間に必要となる資金が確保できているか。
2.現在の投資総額から想定される最大損失額はいくらか、精神的に許容できる範囲内か。
3.NISAやiDeCoなどの税制優遇が受けられる制度を効率的に活用できているか。
特にNISA制度は2024年に大幅に改正され、非課税枠が拡大し、非課税期間や投資可能期間が無期限化されました。つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)をフルに使って新たに追加投資ができる人は資産の組み換えを検討する必要はありませんが、非課税枠をフルに利用しないまま課税口座での運用を続けてしまっている人はNISAを効率的に活用するために見直しが必要です。
また、旧NISA制度を利用していた人の中には「自動的に新NISAに移る物だと勘違いして」そのまま放置していて、気がついたら課税口座に移っていたというケースもあります。まず再認識していただきたい重要なポイントは「旧NISAと新NISAは別モノ」ということです。特に非課税期間が5年と短い一般NISAの場合、毎年その非課税期間が終了していきますので、制度を有効に活用するためにメンテナンスを行う必要があります。
将来のリターンは不確実ですが、税優遇制度を効率的にきちんと使いこなすことは将来手元に残る金額を確実に増やすことにつながります。
iDeCoについても2024年12月から掛金の拠出上限額が一部変更になりました。そして、さらなる改正も検討されています。老後資産を準備するためには非常にメリットが大きいiDeCoも最大限有効に活用することをおススメしています。
そして、日本経済においても「金利のない世界」から「金利のある世界」へ転換が進んでいます。安全性を重視する資産についても、ほぼ利息の付かない銀行預金に預けておくのか、個人向け国債など流動性を確保しながら金利収入の期待できる資産に置き換えるのかによって将来の資産額は変わってきます。
これからの経済動向や株価推移も気になりますが、金融市場の先行きを考えて投資することよりも、まずは使える制度を効率的に使いこなし、再現性の高い合理的な資産運用に取り組むことが重要だと考えています。
自身でコントロールできないことに時間や労力をかけるよりもコントロール可能なことに注力することが大切ではないでしょうか。