6月16日、トヨタ自動車の株主総会で、事実上“元本保証”となる新型株式の発行が承認されました。
このニュースについて、
毎週水曜に出演しているフジテレビのニュースメディアでも解説しましたが、
個人的にはすごく人気が出そうだと感じたので、私なりの考えをまとめておこうと思います。
まず、トヨタが発行するこの「AA型種類株式」とはどういった株式なのか
(トヨタ自動車ホームページ「AA型種類株式に関するご説明資料」より)
特徴
●5年間は売却できない
●株主総会での議決権はある
●発行価格は普通株式の価格の126%~130%
→ 通常の株式より26%~30%高い値段で買わなくてはならない
●配当は発行価格に対して、初年度0.5%、その後は毎年0.5%ずつ上昇し、5年度目以降は2.5%
→ 5年間では、平均すると年1.5%の配当がもらえる
●5年経過後に、発行価格での買取請求が出来る(タイミングは年4回)
→ どんなに株価が下がっても、損をしないようにトヨタが元本を保証してくれる
●5年経過後は、普通株式への転換を請求できる(タイミングは年2回)
→ 株価が発行価格を超えて上昇していれば、普通の株式に転換して値上がり益も期待できる
●5年経過後、トヨタ側にも発行価格で買い取る権利がある(年1回、毎年4月)
→ 会社側の事情によって、強制的にこの株式を買い取られてしまうこともある
最初の報道を聞いて
この新型株式の発行を予定していると最初に知った時、「株式投資なのに元本保証?」何か隠れたリスクや高い手数料を負担させられる仕組みの商品に違いないと考えました。
というのも、
私は金融機関の営業マンとして個人向けに様々な投資商品を販売してきた経験もありますが、このようなデリバティブという複雑な仕組みを使った商品は、一見有利な条件に見えても個人投資家にとってメリットがあまり無いことが多いように感じています。一方で、金融機関側にとっては手数料が稼げるので、販売に力が入りやすいという状況も良く知っています。
したがって、この新しいタイプの株式についてかなり慎重に吟味しました。その結論としては、個人投資家の投資対象として、アリだと思います。
他の多くの上場企業が取り組んでいるように、長期安定的に保有してくれる個人株主を増やしたいというトヨタの狙いも理解できます。日本人が個人金融資産の大半を預金として保有している中で、選択肢を広げたいという社長のコメントにも賛同できます。
一方で、5年後に元本を保証してくれるメリットの対価として、普通の株式より26%~30%高い価格設定が妥当なのかどうかという問題が非常に重要です。しかし、これは金融の専門家でも判断が難しいところだし、正直私には分かりません。
資産運用のアドバイザーとして
FPとして個人に資産運用のアドバイスをする立場からすれば、トヨタの格付や信用力、現在の低金利環境を勘案すると個人投資家にとっては十分検討に値する投資対象であると判断しました。
それに、この投資に対するリスクの所在が明確となっている点も個人投資家には大事なポイントです。5年後の株価なんて誰にも分からないですが、トヨタが5年以内に倒産等しなければ、元本が保証されて、平均年1.5%の配当が得られるのです。それに、もし株価が大きく上昇していれば、値上がり益も得られるかもしれないというオマケ付きです。
注意点としては、いくら元本保証とはいえ、株式投資だということを忘れないことでしょうか。どんなに超優良企業であっても、数年後に経営が傾くかもしれないリスクはゼロではありません。
最後に、今回の「トヨタAA型種類株式」は個人投資家の投資対象としては、選択肢になり得ると判断しましたが、こういった仕組み型の商品への投資は慎重になるべきだと思います。
手数料やリスクが見えづらい設定になっていることが多いからです。
やはり、原則論てしては金融商品はシンプルなほど良いと私は考えます。