投資信託の基準価額変動要因について

 

ドル円相場は一時130円台まで上昇するなど約20年ぶりの円安水準で推移しています。

リスクを抑えながら国際分散投資に取り組む個人投資家にとって投資信託は欠かせない金融商品となっていて、ドル円相場の上昇により多くの投資信託が上昇しています。

そこで、今回は投資信託の値段である「基準価額」の変動要因について整理していきます。

 

基準価額とは、投資信託が今いくらなのかということを示す数字で、株式でいうところの「株価」のようなものです。つまり、投資信託の値段であり、今いくらで購入できるのか、あるいは解約するといくらになるのかを判断する基準になります。

ただし、株価と決定的に異なる点があります。それは、株価がマーケットの動向によって時々刻々と動いていくものであるのに対し、投資信託の基準価額はそこまでリアルには変動しません。日本の投資信託の場合は毎日1回、市場が終了した、午後3時以降に基準価額が計算され公表されます。

また、「株価」は、株式市場の取引に参加している市場参加者の需給バランスによって決まります。つまり、株式の買い手が多ければ値上がりし、逆に売り手が多ければ値下がりします。これに対して、投資信託の「基準価額」は、需給バランスで決まるわけではありません。

「人気があるから〇〇ファンドは高くなっている」と勘違いされる方も多いのですが、投資信託の場合は需給(=人気)によって基準価額が動くわけではないため注意が必要です。

 

基準価額は、その投資信託が投資している株式や債券などの時価総額に、利息や配当金などの収入を加え、そこから運用コストを差し引いた金額を総口数で割って算出されます。

 

また、「基準価額が30,000円の投資信託Aよりも15,000円の投資信託Bの方が割安でお買い得である」と考える人もいますが、これもよくある勘違いです。

投資信託は運用開始する前日の価格を10,000円として基準価額を設定しているため、同じような投資信託であっても運用開始したタイミングによって基準価額の水準は大きく変わってきます。

一般的な買い物と違って投資信託の値段は商品選びの際に参考にならないし、参考にしてはいけないということです。

 

つづいて、基準価額の変動要因について確認します。

投資信託が投資対象としている株式や債券の評価額が上がれば純資産総額が増加して基準価額の上昇要因になります。反対に、評価額が下がれば基準価額の下落要因になります。

例えば、国内株式に投資する投資信託の場合、投資している企業の株価変動と投資信託の基準価額の変動はほぼ一致します。

一方で、海外資産に投資するファンドの場合、投資対象資産の価格変動に為替変動の影響が加わります。

株価がそんなに動いていなくても、ドル円相場の変動によって投資信託の基準価額が大きく上昇することがあります。

米国株式の場合「NYダウ」や「S&P500」という株価指数の変動がニュースで報じられます。その際には「NYダウが〇〇ドル上昇した」などと、必ず現地通貨建てで報道されます。

保有する投資信託の評価額が上昇している場合でも、それが株価上昇によるものなのか、為替相場の変動によるものなのかをしっかり区別して認識しておくことが重要です。

 

最近の基準価額の上昇要因は、投資対象株式の上昇ではなく為替変動による部分が大きくなっています。したがって、為替相場の円安トレンドが変わってしまうと保有投信の損益状況も大きく変わってしまうことは覚悟しておいた方がよさそうです。