資産運用における為替リスクの考え方

ドル円相場は一時125円台まで上昇し、2015年以来の水準まで円安が進行しました。

海外株式が投資対象となっている多くの投資信託の基準価額が急上昇して驚かれた方も多いようですが、これは円安の進行によって円換算した評価額が大きく上昇していることが要因です。

そこで、今回は資産運用における為替変動の影響やリスクに対する考え方を整理していきます。

 

米国の株式市場は3月中旬以降上昇傾向にありますが、年初からの下落をカバーするほどは回復していません。しかし、米国株式で運用する円建ての投資信託の基準価額は既に昨年末の水準を上回るところまで上昇しています。

世界の金融市場における国内市場のシェアは年々低下しており、国内の債券市場はほとんどリターンが期待できず、国内株式市場も長期的な成長を期待できないと考える人が増えています。市場規模に応じて国際分散投資に取り組むと、必然的に海外資産を中心に配分することになります。

そのため、日本人の資産運用において、為替相場の影響はかなり大きくなっていて、為替動向に依存するようなポートフォリオになっているケースも見受けられます。

 

今回は短期間で10円以上円安が進行しましたが、同様に円高が急速に進行するリスクも想定しておく必要があります。

しかしながら、為替相場の先行きを予想することは株式市場の予想以上に難しいと言われています。

短期的には金利動向によって変動することが多く、今回も日銀の「連続指し値オペ(公開市場操作)」を行うとの発表をきっかけに急速に円安が進行しました。

一方で、長期的には2国間のインフレ率の格差で為替相場が決まるという購買力平価の考え方が有力なようです。相対的に高インフレ通貨は低インフレ通貨に対して為替相場は下落すると考える理論であり、将来的には円高が進行するシナリオも十分にあり得ます。

 

したがって、個人が長期的な資産運用に取り組む場合は、為替はあくまでも2つの通貨の交換比率であるということを意識して、円高・円安のどちらに変動しても困らないようにリスクをコントロールしておくことが重要です。

そのための1つの方法が為替ヘッジ付き商品の活用です。

 

また、運用資産の資産配分に注目しがちですが、大事なのは預金なども含めた個人資産全体に対する為替リスクのある資産の比率です。

流動性預金を十分に確保して、ごく一部の資金で運用に取り組む場合は投資先が為替リスクのある海外資産のみでも問題ありません。

 

他にも、海外資産で運用する際に注意すべきことがあります。

それは、「海外資産」と「外貨建て資産」の違いを意識することです。

円安進行リスクに備えるために「外貨建て資産」の保有を増やすように提案する金融機関や営業マンもいますが、多くの人にとって「外貨建て資産」を保有する必要性はありません

「海外資産」と「外貨建て資産」の違いを理解できていない金融機関の担当者やファイナンシャル・プランナーが多くいますので営業マンのセールストークに惑わされないことも重要です。

 

【参考記事】「海外資産」は必要だが、「外貨建て資産」を保有する必要はない

https://bit.ly/3Ductoc

 

当面は、円安が進行する可能性も高そうですが、為替相場の先行きを予想して投資行動を変える必要はありません。個人の家計キャッシュフローやライフプラン、運用予定期間を考慮して長期的な視点で資産運用に取り組むことが重要です。