資産運用本『エンダウメント投資戦略』の紹介

10年以上資産運用アドバイスに関する仕事してきて、色んな本を読んできましたが、
これまでにない視点から書かれていて、個人が資産運用に取り組んでいく際に活かせるヒントがたくさんあると思ったので紹介します。

エンダウメント投資戦略

エンダウメントとはハーバードやイェールなどの米国大学財団のことで、
個人投資家との共通点は返済義務のない自己資金を長期で運用するという点。

投資戦略の特徴は、
1.長期投資に徹する
2.分散投資に徹する
3.ポートフォリオの資産配分を重視して頻繁な売買はしない
4.低コストのETFやインデックスファンドを利用する
5.ヘッジファンドを積極的に活用する

1~4については、私が普段アドバイスしている方針とほぼ一致しています。
ヘッジファンドの積極的活用については個人的にはあまりお勧めしていませんが、他にも日本の資産運用業界の問題点など非常に納得できる説明が多かったように思います。

タイトルを聞くと難しそうに感じますが、イラストや図版も多くて比較的読みやすい本です。

トヨタ“元本保証型”株式への投資の是非について

6月16日、トヨタ自動車の株主総会で、事実上“元本保証”となる新型株式の発行が承認されました。

このニュースについて、

毎週水曜に出演しているフジテレビのニュースメディアでも解説しましたが、

個人的にはすごく人気が出そうだと感じたので、私なりの考えをまとめておこうと思います。

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まず、トヨタが発行するこの「AA型種類株式」とはどういった株式なのか

トヨタ自動車ホームページ「AA型種類株式に関するご説明資料」より)

特徴

●5年間は売却できない

●株主総会での議決権はある

●発行価格は普通株式の価格の126%~130%

→ 通常の株式より26%~30%高い値段で買わなくてはならない

●配当は発行価格に対して、初年度0.5%、その後は毎年0.5%ずつ上昇し、5年度目以降は2.5%

→ 5年間では、平均すると年1.5%の配当がもらえる

●5年経過後に、発行価格での買取請求が出来る(タイミングは年4回)

→ どんなに株価が下がっても、損をしないようにトヨタが元本を保証してくれる

●5年経過後は、普通株式への転換を請求できる(タイミングは年2回)

→ 株価が発行価格を超えて上昇していれば、普通の株式に転換して値上がり益も期待できる

●5年経過後、トヨタ側にも発行価格で買い取る権利がある(年1回、毎年4月)

→ 会社側の事情によって、強制的にこの株式を買い取られてしまうこともある

 

最初の報道を聞いて

この新型株式の発行を予定していると最初に知った時、「株式投資なのに元本保証?」何か隠れたリスクや高い手数料を負担させられる仕組みの商品に違いないと考えました。

というのも、

私は金融機関の営業マンとして個人向けに様々な投資商品を販売してきた経験もありますが、このようなデリバティブという複雑な仕組みを使った商品は、一見有利な条件に見えても個人投資家にとってメリットがあまり無いことが多いように感じています。一方で、金融機関側にとっては手数料が稼げるので、販売に力が入りやすいという状況も良く知っています。

したがって、この新しいタイプの株式についてかなり慎重に吟味しました。その結論としては、個人投資家の投資対象として、アリだと思います。

他の多くの上場企業が取り組んでいるように、長期安定的に保有してくれる個人株主を増やしたいというトヨタの狙いも理解できます。日本人が個人金融資産の大半を預金として保有している中で、選択肢を広げたいという社長のコメントにも賛同できます。

一方で、5年後に元本を保証してくれるメリットの対価として、普通の株式より26%~30%高い価格設定が妥当なのかどうかという問題が非常に重要です。しかし、これは金融の専門家でも判断が難しいところだし、正直私には分かりません。

 

資産運用のアドバイザーとして

FPとして個人に資産運用のアドバイスをする立場からすれば、トヨタの格付や信用力、現在の低金利環境を勘案すると個人投資家にとっては十分検討に値する投資対象であると判断しました。

それに、この投資に対するリスクの所在が明確となっている点も個人投資家には大事なポイントです。5年後の株価なんて誰にも分からないですが、トヨタが5年以内に倒産等しなければ、元本が保証されて、平均年1.5%の配当が得られるのです。それに、もし株価が大きく上昇していれば、値上がり益も得られるかもしれないというオマケ付きです。

注意点としては、いくら元本保証とはいえ、株式投資だということを忘れないことでしょうか。どんなに超優良企業であっても、数年後に経営が傾くかもしれないリスクはゼロではありません。

最後に、今回の「トヨタAA型種類株式」は個人投資家の投資対象としては、選択肢になり得ると判断しましたが、こういった仕組み型の商品への投資は慎重になるべきだと思います。

手数料やリスクが見えづらい設定になっていることが多いからです。

やはり、原則論てしては金融商品はシンプルなほど良いと私は考えます。

 

ヘッジファンドに投資する意義はあるのか

4月4日の日経新聞夕刊に『ヘッジファンド、個人に的』という記事が掲載されていました。

米国ヘッジファンド業界が個人投資家向けの商品を増やしているという内容です。そもそも、ヘッジファンドとは、市場全体の相場環境に関わらず一定の運用成績を目指す投資商品です。簡単に言うと、「どんな市場環境でも確実に利益を出す」ことを目指しています。

日本でも金融機関の窓口でヘッジファンドに投資する投資信託を数多く取り扱っていますので、耳にすることも多いと思います。

一般に最低投資額が数億円を超えることが多く、機関投資家や富裕層向けの商品ですが、一般の個人でも投資出来ることはメリットがあるように感じるかもしれません。

しかし、私は一般の個人がヘッジファンドに投資する意義は低いと考えます。

ヘッジファンドの最大の難点は手数料が高いことです。最近は海外の年金基金などは高コストに見合うパフォーマンスが得られないとして、ヘッジファンドへの投資を減らしています。情報開示が不足している点を懸念する声も大きいようです。

私自身も、金融機関で営業の仕事をしていた時はヘッジファンドに投資する商品を数多く販売してきました。それまで非常に素晴らしい実績を残していると感じる商品も多く、多くのお客様に投資を勧めていたこともあります。しかし、実際はその後も期待される実績を残し続けている商品は殆どありませんでした。一時期は良い運用成績を残していても、だいたいそれは長く続きません。

 

そして、もう1つ大事なポイントは、投資している内容を個人には理解しづらい点です。

シンプルな株式投資信託であれば、運用成績が芳しくない理由は明確です。景気が悪くて株式市場全体が不調なのか、投資している銘柄選択が良くないのか、要因は誰が見ても分かります。

ヘッジファンドは様々な運用戦略を組み合わせて複雑な運用をしていることが多く、パフォーマンスが悪くてもその要因を多くの人は理解できません。

分散投資先の1つとしてヘッジファンドへの投資が有効であるという理論も当然理解出来ますが、ヘッジファンドの良し悪しを判断できないのであれば、投資を検討すべきではないと思います。

 

それに、そんなに素晴らしいファンドが存在するのであればプロの機関投資家だって投資したいはずですよね。プロが投資をしないのに、小口の個人に販売するのはワケがあると思いませんか?実は、非常に大きなリスクを取っているとか、手数料を高く設定しているとか。。。

 

いずれにしても、本当に価値のある金融商品はシンプルなはずです。

商品を作り出す金融機関側で仕事をしてきた経験からも、商品内容が複雑で理解しにくい商品には手を出すべきではないと思います。

投資信託に販売手数料は必要か?

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本日は、セゾン投信を訪問し中野社長に色々と話を伺ってきました。

まず、最初に驚いたのは大手金融機関とは比べものにならない環境で仕事をされていること。社長もポートフォリオマネージャーである運用部長もみんな一緒に机を並べて仕事をしています。社長室やディーリングルームもありませんでした。

それだけ、投資家の方を向いて投資信託を作っている姿勢の表れでもあると思います。都心の一等地に本社を構える大手金融機関が作る投資信託はコストが高くなるのも当然ですよね。ローコストで良い商品を提供しようというセゾン投信さんの想いが表れていると感じました。

これまでも中野社長の講演には何度も参加していますが、毎回刺激的で熱い想いが伝わってきます。
その中で、度々出てくるのが「投資信託の販売手数料に社会的意義はない!」という言葉。

金融機関の営業現場で長く仕事をしてきた経験から、販売手数料の大小によって営業担当者のその商品販売に対するモチベーションが変わるのは紛れもない事実です。
販売手数料が存在しない方が、顧客にとってより適切なアドバイスを営業担当者も出来るようになります。
投資信託を販売する金融機関側からすれば、大きな収益源が無くなってしまいますが、信託報酬の一部を受け取っているわけですし、場合によっては相談料や預かり資産管理料を設定する方が顧客にとってはフェアな方法だと思います。

最近は販売手数料が無料の投資信託も増えており、その中に魅力的な商品もたくさんあります。投資信託を使って資産運用をする人は、まずはその中から選ぶようにしたいですね。

中野社長には、独立の経緯や現在の仕事の状況も報告しましたが、「既成概念にとらわれず、正しい事をやっていればいつかは評価されるから一緒に頑張ろう!」と応援メッセージを頂けたのも嬉しかったです。

NISA口座、半数が休眠の理由

フォーラムセミナー

 

2月28日に、FP協会東京支部の主催する新春中野FPフォーラム2015にてセミナー講師を担当しました。

NISAがスタートして1年経ちましたが、多くの人がどのようにNISAを活用しているのかを報告し、投資初心者がNISAを徹底活用する為にはどうしたらよいか具体的な方法をお伝えしてきました。

初年度に800万件を超えるNISA口座が開設されました。これは金融業界の当初の目標を大きく上回るものでした。しかし、その半数以上は実際に投資に使われていない残高がゼロの休眠状態にあります。

まだ眠っているだけでいずれこの口座でも投資がスタートするという意見も一部にはありますが、私には到底そのように思えません。

なぜかというと、NISA導入時の各金融機関の取り組み方に理由があります。口座を開設するだけで2000円をキャッシュバックするといったキャンペーンも要因の1つですが、大手金融機関の尋常ではない営業力に本当の原因があると思います。

各金融機関にはNISA口座の獲得目標があり、それが部門ごと、支店ごと、社員ごとと順次目標が割り振られます。大手金融機関は、与えられた目標を一致団結して達成するもの凄い力があります。
社員が自身のNISA口座を開設するのは当然かもしれませんが、社員の家族にも呼びかけて開設してもらいます、たとえ投資に興味が無くても既存の取引先のお客様にもとりあえず口座だけ開けてもらっていたようです。一部にはノルマを達成する為に、学生時代の後輩を集めて口座数を稼ぐ、といったことまでやったとの情報もありました。。

金融機関に頼まれて、とりあえず口座を開設しただけの人が投資を開始するでしょうか。
そして、大手金融機関の営業担当者が与えられている営業目標の大きさからすれば、100万円の投資を獲得する為の営業活動に注力する余裕はありません。
当初は獲得件数の目標があったから営業力が発揮されたのであって、その口座中で投資をさせることに力を注ぐ気になれないというのが営業担当者の本音だと思います。

私にはこの休眠口座が目を覚ますとは思えません。