NISAで利用する商品を選ぶときの注意点

2024年からNISA(少額投資非課税制度)が大幅に改正され、様々なメディアを通じて特集が組まれていることもあり、NISAをどのように活用したらよいかといった相談が大きく増えました。そこで、今回はNISAで利用する商品を選ぶときの注意点について整理しておきます。

まず大前提となるのは、NISAでの運用であっても課税口座での運用であっても、資産運用の原則は変わりません。リスクをコントロールしながら確実性の高い資産運用に取り組むのであれば、投資対象を幅広く分散し、長期的な成長が期待できる投資信託に投資することになります。長期的な運用になるほど影響が大きくなるためコストの安さも重要です。つまり、多くの人にとっては全世界の株式を投資対象とするコストの安いインデックス・ファンドを利用することが無難な選択になります。

そして、新しいNISA制度の特徴を考慮すると、商品選びにおいて特に重要となるのが投資信託の持続可能性です。

新しいNISAの特徴は大きく3つあります。

1つ目は「運用益が非課税」であること。例えば、期待リターンが5%の運用だと通常は1%相当が課税されてしまいますが、NISAで保有すると実質的には年率1%相当が収益に上乗せされることになります。

2つ目は「無期限」であること。口座開設期間も恒久化され、いつからでも始めることができて運用を続ける限りずっと非課税のまま長期投資が可能です。

3つ目は「上限1800万円」と非課税枠が大きく広がったことです。

これらの特徴を最大限有効に活用するためには、長期で利用し続けられる商品を選ぶことが特に重要です。日本では現在5000~6000本の投資信託が運用されていますが、資金流入が安定していて一定の資産規模で運用されている投資信託はそれほど多くありません。NISAで投資可能な商品は約2000本に絞り込まれていますが、それでも規模が小さく長期にわたって運用を継続できそうにない商品が多く含まれています。残高が増えていかなければ、そういったファンドは繰上償還になってしまう可能性が高く、NISA制度は長期運用可能な仕組みになっても利用する投資信託の永続性が期待できなければ意味がありません。

制度改正によって、非課税枠で保有する商品を売却した場合には枠の再利用ができるようになりましたが細かい条件があります。それに、長期投資によって運用資産評価額が増えても、売却したり償還されてしまうと、当初の投資金額分しかNISAで再投資できません。

したがって、制度の特徴をしっかり理解していれば、20年後や30年後でも成長が期待できて保有し続けられる商品を選ぶことが合理的な選択になるはずです。

そして、新しいNISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠があります。

枠ごとに使い分けをするように主張する金融営業マンやメディア関係者も多いと感じていますが、買付方法が違うだけで使い分けを考える必要はありません

多くの普通の生活者にとっては、成長投資枠もつみたて投資枠と同様に低コストの世界株インデックス・ファンドに投資するのが合理的な選択になりますし、2つの枠で同じ商品に投資していた方が将来運用資産を取り崩す際の出口戦略の管理もしやすくなります

そもそも、「つみたて投資枠」では金融庁が、長期投資に適したバランス良く広く分散投資されていて、運用コストの安い商品を“適格”として選定しています。これに選ばれないような商品は「成長投資枠」にも不適格だと考えておくべきではないでしょうか。「成長投資枠」という言葉に迷わされてはいけないと思います。