幻冬舎ゴールドオンラインに寄稿しています。
資産運用アドバイザーが教える「大事なお金の守り方・殖やし方」
【第4回】金融機関の営業マンが勧める『外貨建て商品』の実力は?
https://gentosha-go.com/articles/-/15844
税務当局は個人の全財産を把握できるのか
平成30年度税制改正関連法が3月28日に成立しました。
高所得者にとっては増税となる改正が目立ちます。
そして、日本政府の財政状況を考えるとこの流れは今後も続いていくものと考えられます。
そこで、今回は個人の財産状況を税務署がどこまで把握できるのか整理をしてみたいと思います。
証券会社からマイナンバーの提出を求められた経験のある人も多いと思いますが、
2018年1月からは銀行でもマイナンバーを預貯金口座とひも付ける「付番」が任意で始まっています。
3年間の状況をみて義務化が議論になるそうですが、専門家の間では義務化が既定路線のようです。
将来的に金融機関によるマイナンバー収集が完了すると、税務署に全ての金融取引を把握されることになります。
かつては、所得2000万円超の人は確定申告の際に『財産及び債務の明細書』を提出する必要がありましたが、
未提出でも罰則規定がなく税務署から督促があっても対応しないでそのままになっているケースが多かったようです。
しかし、この『財産及び債務の明細書』は、現在『財産債務調書』と名前を変えて
未提出者に対する罰則規定もあり厳格に適用されています。
対象者は所得2000万円超で「3億円以上の財産がある」か「株式や投資信託を1億円以上保有している」人です。
これにより、資産家に対する税務当局の財産把握はかなり進んできています。
そして、税務当局が最近注力しているのは、国外財産の把握です。
海外の不動産や金融商品への投資を勧める業者も増えているので、私も相談を受けることが非常に増えています。
違法業者も多く、メリット以上にデメリットやリスクが多い案件ばかりなので、
基本的にはやめておくようにアドバイスすることが多いですが、世間一般では利用する人が増えています。
2014年からは国外に5000万円超の財産を持つ場合、
資産内容を記す『国外財産調書』の提出が義務付けられていますが、こちらも未提出の人が多いと言われています。
国際的には税務情報を共有する仕組み「CRS(共通報告基準)」もあります。
各国・地域の税務当局が金融機関から口座情報の報告を受け、自動的に情報を交換するもので、
租税回避地を含む100以上の国・地域が参加していて、日本も2018年9月末までに、この枠組みに加わる予定です。
つまり、近い将来国内資産も海外資産も全て税務署に把握される時代が到来しそうです。
法人の活用や不動産など実物資産への投資により合法的に税金負担を抑制する方法もないわけではありませんが、
抜本的な対応策は存在しません。
対策があるとすれば、税金を払っても資産規模を維持できるように資産を増やしておくことでしょうか。
もちろん、過大にリスクを取って財産を減らしてしまっては意味がありませんので、
リスクをコントロールしながら無理のない範囲で効率的な資産運用に取り組む必要はあります。
個人的には諦めて税金を払う覚悟をした方が良いように思います。
日経モーニングプラス出演
4月12日(木)7時05分から放送のBSジャパン「日経モーニングプラス」に出演しました。
「中古住宅が買いやすくなる?住宅診断制度」をテーマに、中古住宅市場の現状やインスペクション制度について、また同制度を利用するにあたっての注意点などを解説しました。
「マネーCLIP」のコーナーでは、資産運用に役立ちそうな記事を一つ選び読み解いていきます。
今回は、4月7日付日経新聞朝刊「相続『家なき子特例』の適用厳しく」記事を解説しました。
こちらに詳しく掲載されています。
http://www.tv-tokyo.co.jp/plus/business/entry/2018/016894.html
長期投資の有効性
前回のブログでは、分散投資の効果と重要性についてまとめました。
今回は資産運用において、「分散投資」と並んで重要になる「長期投資」についてまとめてみたいと思います。
2月以降、株式市場は変動の大きい相場展開が続いています。
日本も米国も2018年に入ってからの直近高値に対して1割以上下落する場面がありました。
このような短期的な市場変動を利用して金融機関の営業マンは様々な売買提案を行います。
私も銀行員として働いていた時代はこのような市場変動をキッカケに使って営業活動をしていました。
しかし、値動きに乗じてタイミング良く売買を行うことは投資のプロでも難しいことです。
私自身もそういった取引にチャレンジして上手くいったこともありますが、
失敗して損をしたこともたくさんあります。
このような自分自身の投資経験だけでなく、大手金融機関で取引する1000人以上の個人投資家が
相場変動時にどのような行動に出るかを見てきた経験から、
短期的な変動のタイミングを上手く掴んで取引を続けることは不可能に近いと悟りました。
人間はどうしても感情に流されてしまい、合理的な判断ができない生き物だというのも1つの要因です。
つまり、どんなに時間と労力をかけても、的確なタイミングで投資判断ができる可能性は低く、
運用成績も結局は相場全体の動き次第であるということです。
多くの場合、株式市場が上昇していかないことにはリターンを確保できません。
短期的な株価の変動を予想することは不可能ですが、
一方で長期的な株価の変動はきちんとした原理原則があって動いていると私は考えています。
特定の会社の株価も短期的にはランダムに動きますが、長期的にはその会社の企業価値に集約していきます。
企業が利益をあげて成長していく限り株価も上昇していきます。
したがって、価値が継続的に増大していく対象に時間をかけて投資を続けることで
確実にお金を増やすことができます。
逆に言うと、成長するものに投資しないと長期で投資していても報われません。
したがって、成長する資産を見つけることが大事なわけですが、
多くの人にとって何(どこの地域、どの会社)が成長するのか選別することは困難です。
そのため、世界経済全体に投資することによって地球規模での経済成長の恩恵を
取り込んで自分のお金を増やしていく方法をお勧めしています。
世界経済の中心的な役割を担う米国の株式市場について、
以下のコラムに「S&P500株価指数」という米国の代表的500銘柄の株価を集計した指数の過去の推移が掲載されています。
長期的に成長を続け1年あたり9%超のリターンとなっていることが確認できます。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/uiNTiYLj/
短期的には上下を繰り返し、リーマン・ショック時には大きく暴落していますが、長期的には右肩上がりです。
米国の実体経済が成長を続けていることで、短期的な上下の値動きを経て米国株式市場は史上最高値を更新しています。
このような長期的に成長していく市場に時間をかけて投資することで確実にリターンが得られるのです
なお、上記の竹中正治氏のコラムは株価下落に対するリスクヘッジや為替リスクのコントロールの重要性についても説明しています。
私がいつも相談者にお伝えしていることを、データも使って解説してありますので、興味ある方は是非ご一読ください。
分散投資の意義
資産運用において分散投資が重要とよく言われますが、
リーマン・ショックのような金融危機が発生すると、
世界中のあらゆる資産が値下がりして「資産を分散しても意味がなかった」といわれたものです。
今月発生した株価急落局面でも同様でした。
しかし、その後の回復局面まで考えると、実はしっかりとした分散投資の効果があります。
つまり、短期的に見ると分散効果が発揮されない局面もありますが、
中長期的に考えると世界中の投資マネーが次の投資対象を探して移動していきますので、
投資対象を幅広く分散しておくことで、必ず分散効果が得られるものと考えられます。
そもそも、「分散投資」の効果とは、
値動きの異なる投資対象を組み合わせることで、全体のリスクを下げることができる効果のことですが、
上がるものと下がるもので値動きが相殺されることによって全体の価格変動が抑えられるということだけではありません。
たとえば、期待リターンが3%の投資対象Aと期待リターンが4%の投資対象Bと期待リターンが5%の投資対象Cがあったとします。
これらA,B,Cを均等に組み合わせて投資すると、期待リターンは平均の4%になります。
一方で、リスクはA,B,Cそれぞれの持つリスクの大きさを平均したものより”必ず”小さくなるのです。
組み合わせることで、リターンは平均を維持したままリスクだけ下げられるという投資家にとっては都合の良いことが実現できるのが、分散投資の最大のメリットです。
どの程度リスクが低減できるかは、
相関係数という別の指標によって変わってきますし、時代によっても大きく異なります。
確かに、現在のように世界的な低金利局面では分散投資効果が小さくなっているのも事実ではあります。
それでも、ギャンブルのような投資ではなく、リスクをコントロールしながら効率的な資産運用に取り組むためには、分散投資は欠くことができません。
日経新聞夕刊にコラム掲載
日本経済新聞(2月7日付夕刊:6面)にコラムが掲載されました。
【家計のギモン】海外に資産分散させたい 円建て、外貨建てより効率的
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26623320X00C18A2NZKP00/
2018年の投資に対する考え方
2017年の株式市場は日本やアメリカだけではなく、新興国も含め世界各国で上昇。
アメリカのNYダウは何度も過去最高値を更新しました。
他にも、金価格も円建てでは堅調に上昇し、
原油も年末には約2年半ぶりの高値に上昇するなど商品市場も全般的に順調でした。
さらに大幅に高騰し注目を集めたのは仮想通貨です。
代表的なビットコインは1年間で約20倍になりました。
為替市場も比較的安定していたので、日本の投資家であればほとんどの人が
リターンを得られた年だったように思います。
私がアドバイスさせて頂いているお客様も
投資した時期やリスクの取り方によってリターンの程度に差はありますが、
株式を中心に投資しているので、
全員が運用資産の評価額を増やすことができた1年でした。
もちろん、最悪の事態も想定して対処可能なリスクの程度に合わせた
資金の大きさでしか投資していませんので、
無理なリスクを取っているわけではありませんし、
ビットコインのように適正な価値が判断できないマネーゲームに
興じた結果ではありません。
短期的な価格変動を受け入れ、将来的に成長していく可能性の高い資産へ
投資しているのですから、お金が増えるのはある意味当然の結果とも言えます。
2018年については昨年ほどうまくいかない1年になるかもしれません。
先進国の金融引き締め政策、北朝鮮などの地政学リスク、
割高な資産の価格調整などリスク要因が増えてきているからです。
しかしながら、もし市場環境が変わっても資産運用の基本スタンスを
変える必要はありません。分散投資を徹底しながらリスク管理をしっかり行うことで、
どのような環境変化にも対応できると考えています。
市場環境が好調な時は誰でもリターンが得られますが、
調整局面での対応によってその後の投資成果は大きく変わってきます。
今年はより一層リスクコントロールの重要性が高まる1年になるかもしれません。
日経モーニングプラス出演
1月18日(木)7時05分から放送のBSジャパン「日経モーニングプラス」に出演しました。
「2018年下落相場に備える金融商品は」をテーマに、2018年にどんなリスクがあるのか、下落相場に備える金融商品としてどんなものがあるのか(特にインバース型ETF、リスクコントロール型投信について)、投資する際の注意点について解説しました。
週刊東洋経済「保険に騙されるな」に寄稿
本日発売の週刊東洋経済の保険特集に取材協力・寄稿しています。
記事では本来の保険機能と資産運用は分けて考えた方が大切なお金を守ることができるとお伝えしています。
金融庁も指摘!日本の投資信託の問題点
金融庁が10月25日に平成28事務年度の金融レポートを発表しました。
金融レポートは、金融庁が何を目指すのかが明確に示されており、 現状の金融サービスについての問題点も確認できます。
今回はその中の投資信託に関連する指摘のうち4つのポイントをまとめます。
1.販売手数料の高い商品・サービスの販売シェアが増えている
銀行における投資信託の販売手数料の動向を見ると、 2016年度に販売された投資信託全体の平均販売手数料は前年度に比べて上昇している。
販売額上位5商品は販売手数料3%以上の商品の割合が高まっていることから、 手数料の高い商品にシフトしつつあることが窺われると言及しています。
また、前年度の金融レポートでも問題点を指摘されていたラップ型運用サービスの残高・件数も伸びています。
投資信託の販売手数料について、ノーロード(販売手数料なし)の投資信託が増えているという報道も多いので全体として下がっていると考えていると大きな間違いのようです。
2.運用成績の高いアクティブ・ファンドが少ない
金融庁が過去10年以上存続している株式アクティブ運用投資信託281本の信託報酬控除後のリターンについて分析を行った結果、
過去10年間の平均リターンは年率1.36%であり、 全体の約3分の1の商品のリターンがマイナスとなっている状況でした。
また、インデックス運用投資信託と比較しても、71%はインデックス運用投資信託を下回っているというものでした。
コストが高くてもそれを大きく上回るリターンが得られれば、問題ではないかもしれませんが、
リターンが得られていないにもかかわらずコストが高いとすればそれは大きな問題です。
3.インデックス運用商品のシェアが低い
米国では長期の資産形成に適した低コストのインデックス運用投資信託の割合が年々増加しています。
特に規模の大きな投資信託においてインデックスタイプの割合が上昇しており、個人の資産形成を担う中核的な商品の低コスト化も進んでいます。
一方、日本では足下でインデックス運用投資信託の割合が上昇傾向にあるものの、 米国に比べるとその上昇スピードはかなり穏やかです。
4.販売会社と運用会社の間の結びつきが強く、顧客の利益が優先されていない
同一のグループ内に銀行や証券会社といった販売会社を持つ大手運用会社では、販売会社との関係性を重視し、
販売会社の販売しやすい商品を組成し提供してきました。
同一グループ内に銀行や証券会社といった販売会社を持つ大手運用会社5社が2014年に設定した公募株式投資信託を分析し、
コストに見合ったパフォーマンスが上がっているとは言い難いとも指摘しています。
金融庁の方と直接話をする機会がありますので、 本気で改革を進めようと取り組まれていることを私は実感していますが、
金融機関はそれほど簡単に変われないと思います。
やはり、金融機関の変化に期待するよりも、投資家が賢くなっていくしかないですし、 賢くなってようやく金融機関も変わるのだと私は思います。
金融レポートは金融庁のHPで公表されていますので、興味のある方は直接ご覧ください。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/j4ZoTHrM/