株式市場の下落が続いています。8月2日は前日比2,216円も下落し、メディアは「歴代2番目の下落幅」とか「ブラックマンデーに次ぐ下げ幅」と大騒ぎです。一部のお客様からも問い合わせの連絡を頂戴していますので、今回は株価急落時の対応についてまとめたいと思います。
まず、メディアの報道に煽られず冷静に対応することが重要です。下落幅(下落額)でみると歴代2番目かもしれませんが、下落率は5.8%にすぎず歴代29位にとどまります。下落レベルは金額ではなく、比率(%)で測るべきです。下落の金額が大きくなるのは、これまで上昇してきたからで、同じ比率(%)でも水準が高くなれば、数字での変動幅が大きくなるのは当然です。
たしかに、直近の1ヶ月で2割近い下落ですから一応「大幅下落」と言っても良いとは思います。ただし、これも1年に1回くらいは起こるものだと覚悟しておくべきでしょう。
今回も米国経済に景気減速を示すデータの発表が続き、ハイテク株主導の高値圏から調整が発生したタイミングに日銀の利上げで国内経済の先行きにも不安が生じて市場が反応していると言われています。さらに、160円を超える過度な円安進行が修正されていることも株式市場に大きな影響を与えています。
国内株式市場は6ヵ月前と同じ株価水準に戻っただけですし、これまでの上昇ペースが速かったことによる、調整局面だと私は判断しています。
今後も米国大統領選挙の結果や日米金融政策の見直しによって大きな変動が続くかもしれませんが、相場の先行きを予想して運用方針を変える必要はありません。
短期的なリターンを追求して売買を繰り返すような投資スタイルであれば、色々と対応しなくてはいけない局面だと思いますが、分散投資を徹底しながらリスク管理をしっかり行い資産価値の上昇から長期的なリターンを追求していくスタイルであれば、やることは変わりません。
最長で5年くらいは相場が回復せずマイナスが続いても問題ないように投資額を増やし過ぎず手元資金を確保できていれば、当初の投資方針に沿って運用を継続するだけです。
こういった株価急落局面で絶対にやってはいけないことは、評価額の下落に不安を感じて売却してしまうことです。
これまで保有資産の評価額がどんどん上昇して利益が出ていたのに、下落して利益が少なくなってしまうと売却して一旦利益を確保しておきたいと考える人がいますし、その気持ちもよく分かります。他にも、「当面回復は期待できないし、まだまだ下がるだろうから一旦売却しておいて、安くなったところで買い戻そう」と考える人もいるかもしれませんが、それもお勧めできません。多くの人は買い戻すタイミングを逃してしまい、市場回復局面でのリターンを得られないだけでなく、何もせずに保有し続けた場合よりも少ないリターンしか得られません。
確実にリターンを獲得するためには『市場に居続けること』が大切です。
そして、積立投資により運用資産の積み上げに取り組んでいる場合には積立を停止してしまうことも絶対に避けておきたいことです。下落局面で買い増しを続けていくことが大きなリターンにつながります。
リスクをコントロールしながら長期的に成長が期待できる資産へ投資しているのであれば、何も変える必要はないということです。
短期的には景気が後退しても世界全体でみれば経済成長は続き、どのような金融ショックが起きても株価はいずれ元の水準を回復しています。
売却はライフプランと資金計画に基づいて計画的に行いましょう。決して、感情的に進めるものではありません。
一方で、こういった急落局面でやっておいた方が良いこともあります。
株価下落に備えて余力を残して取り組んでいた場合には、追加投資を検討しましょう。積立によって定期的に運用資産を積み増している場合には積立金額を増額することを検討しても良いかもしれません。
ただし、1割程度の下落は年に何回か起こることなので、一気に増やし過ぎないことがポイントです。数年の運用経験しかない人は一気に追加投資したくなるようですが、1割程度の下落は絶好の投資チャンスというわけではありません。
さらに、下落率が大きくなり直近の高値から2割、3割と下落が大きくなっても更に追加投資できる余力を残しておくことが大切です。3割程度の下落までくれば、思い切って投資額を増やしてもいいかもしれませんが、そこまでくるとビビッてしまって決断できなくなる人が多いように思います。
市場環境が好調な時は誰でもリターンが得られますが、現在のような調整局面での対応によってその後の投資成果は大きく変わってきます。
いつ、どの程度の大きさの下落になるか事前に予想することは誰にも出来ません。
株式市場が急落しても慌てることのないように、追加投資の余力を確認し、現状のアセットアロケーション(資産配分)で想定される最大損失額をもう一度確認しておくことが重要だと考えます。
過度に恐れることなく、冷静に淡々と資産運用を続けていきましょう。