株価急落局面における資産運用のポイント

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、世界中の株式市場が大きく下落しています。
そこで、今回は「〇〇ショック」と呼ばれる株価急落局面への対応法について整理していきます。

まず、現状を正しく把握する必要があります。
メディアの報道には、バイアスがかかりがちで、どうしても過剰に見せたがる傾向があります
例えば、株価の急落を「NYダウ1400ドル急落、過去最大の下落」と報じます。
あたかも史上最悪かのような印象を与えますが、下落率は5%程度ということもあります。
下落レベルは実数字ではなく、比率(%)で測るべきです。
下落の金額が大きくなるのは、これまで上昇してきたからで、
同じ比率(%)でも水準が高くなれば、数字での変動幅が大きくなるのは当然です。
もちろん5%の下落も大きな下落ではありますが、
年に何度か発生する下落率であり過度に恐れる必要はありません。

一方で、1ヶ月で2割以上下落する局面は年に何回もあるわけではありません。
今後の新型コロナウイルスの広がりや経済への影響について容易に判断できませんが、
短期的には企業業績が悪化し景気が悪くなることは間違いなさそうです。

しかしながら、相場の先行きを予想して運用方針を変える必要はないと考えています。
短期的なリターンを追求して売買を繰り返すような投資スタイルであれば、
色々と対応しなくてはいけない局面だと思いますが、
分散投資を徹底しながらリスク管理をしっかり行い資産価値の上昇から
長期的なリターンを追求していくスタイルであれば、やることは変わりません。
最長で5年くらいは相場が回復せずマイナスが続いても問題ないように投資額を増やし過ぎず
手元資金を確保できていれば、当初の投資方針に沿って運用を継続するだけです。

こういった急落局面で絶対にやってはいけないことがあります。
それは、評価額の下落に怖くなり運用をやめようと売却してしまうことです。
「当面回復は期待できないし、まだまだ下がるだろうから一旦売却しておいて、
安くなったところで買い戻そう」と考える人もいるかもしれませんが、それもお勧めできません。
多くの人は買い戻すタイミングを逃してしまい、市場回復局面でのリターンを得られないだけでなく、
何もせずに保有し続けた場合よりも少ないリターンしか得られません。

そして、積立投資により資産形成に取り組んでいる場合には
積立を停止してしまうことも絶対に避けておきたいことです。

リスクをコントロールしながら長期的に成長が期待できる資産へ投資しているのであれば、
何も変える必要はないということです。
コロナ問題もいずれ収束するのは明らかです。短期的には景気が後退しても、
世界全体でみれば成長は続き、株価はいずれ回復すると考えられます。

逆に、こういった急落局面でやっておいた方がいいこともあります。
株価下落に備えて余力を残して取り組んでいた場合には、追加投資を検討しましょう
積立によって定期的に運用資産を積み増している場合には
積立金額を増額することを検討しても良いかもしれません。
ただし、2割程度の下落は数年に1回程度は起こることなので、
一気に増やし過ぎないことがポイントです。
数年の運用経験しかない人は一気に追加投資したくなるようですが、
2割程度の下落は絶好の投資チャンスというわけではありません。

さらに、下落率が大きくなり直近の高値から3割、4割と下落が大きくなっても
更に追加投資できる余力を残しておくことが大切です。
4割程度の下落までくれば、思い切って投資額を増やしてもいいかもしれませんが、
そこまでくるとビビッてしまって決断できなくなる人が多いように思います。

市場環境が好調な時は誰でもリターンが得られますが、
現在のような調整局面での対応によってその後の投資成果は大きく変わってきます。
過度に恐れることなく、冷静に淡々と資産運用に取り組むことをお勧めしています

資産運用の終わらせ方(出口戦略)

資産運用は「始めることよりも終わらせることの方が難しい」といわれます。
自分の老後に備えて投資信託などを買い続けてきたものの、
資産の売却についてはタイミングや方法がよくわからないという相談を受けることが多くあります。
そこで、今回は資産運用の終わらせ方(出口戦略)について整理していきます。

投資スタイルによっても資産運用の終わらせ方は大きく異なります。
長期的な価値の上昇が期待できずに、どこかで全て売却し清算した方がよい投資対象も多くあります。
一方で、私がお勧めしている
「長期的に価値が増えていく資産に時間をかけて投資していくスタイル(長期の国際分散投資)」であれば、
資金を使う時期が近づくまでずっと運用を続けていくことでも問題ありません。
ご自身で使いきれない場合には運用したまま次世代へ引き継げば良いのです。

では、老後に使う予定の資産を運用している場合はいつ売却したら良いのでしょうか。
できるだけ高い時期に売りたいと考えるのは当然のことですが、
株価下落後の最安値で投資することが難しいのと同様に、
ベストなタイミングを見極めることは不可能です。
もう少し上昇するだろうと期待して待っている間に反落してしまうことや、
もうそろそろピークではないかと売却してしまうと更に上昇が続いてしまい後悔するということはよくあります。

そこで大事になってくるのが「売却の時間分散」です。
投信積立サービスなどを利用して定期的に運用資産を積み上げていくのと同じように、
時間をかけてタイミングをずらしながら売却していきます。
ただし、そのためには将来の家計キャッシュフローを把握して
「いつ」「どのくらい」の資金が必要になるか整理しておくことが不可欠です。
想定外の事態の発生などに備える一定の流動性資金を確保しながら、
資金が必要となる時期に合わせて、運用資産を少しずつ解約していくということです。

具体的には、資金が必要になる5年くらい前から徐々に売却を始めるのがよいと考えます。
これは大きな金融危機が発生してしまうと回復するまでに5年くらいかかってしまうこともあるからです。
解約するタイミングは、半年に1度や1年に1度の頻度でも問題ありませんし、
毎月少しずつということでも構いません。

時間分散しながら売却を進める方法は3つあります
1.定量売却
2.定額売却
3.定率売却
「1.定量売却」は毎回同じ口数を定期的に売却します。
全てを売り切る時期を事前に確定できますが、毎回の売却金額は相場状況によって変動します。
「2.定額売却」は毎回、同じ金額が手元に入る点はわかりやすいですが、
相場変動によって売り切るまでの期間は伸び縮みします。
「3.定率売却」は資産残高の一定割合を定期的に取り崩していく方法です。
売却金額が徐々に減っていきます。

時間分散しながらの売却以外にも、配当金などを定期的に受け取りながら運用を継続する方法もあります。
現在の市場環境でもETF(上場投資信託)を活用することで3%前後の配当を定期的に受け取っていくことも可能です。

金融機関も定期売却など資産活用に関するサービス拡充には力を入れているようですが、
引き出すペース(期間)や金額、引き出した資金の利用目的によっても最適な方法は変わってきます
公的年金や企業年金、個人年金保険などの受取時期や金額を考慮しながら、
積み上げてきた運用資産をいかに活用していくか、資産運用の終わらせ方(出口戦略)を早めに計画し
効率的な資産管理に取り組むことで、トータルで活用できる資金の金額も増やしていけると考えています。

2020年の投資に対する考え方

2019年は年末にかけて国内外の株式市場が大きく上昇し、
海外株式市場は史上最高値を更新する水準にありました。
多くの株式市場が大幅下落する中で新年を迎えた1年前とは大きく異なる状況です。

弊社のお客様も投資した時期やリスクの取り方によってリターンの程度に差はありますが、
海外株式を中心に投資しているので、全員が運用資産の評価額を増やすことができた1年でした。
短期的な価格変動を受け入れ、将来的に成長していく可能性の高い資産へ投資しているのですから、
お金が増えるのはある意味当然の結果とも言えます。

2020年も引き続き日米欧の中央銀行は緩和基調の金融政策を続ける見通しです。
世界経済に明るい兆しもありますが、中東情勢の悪化は原油高や為替リスクの上昇の可能性を高め
株式市場にとって大きな波乱要因となりそうです。
今年は米国大統領選挙も控え、引き続き米中貿易協議の進展をにらんだ市場展開になると考えています。

しかしながら、いつもお伝えしているように、
相場の先行きを予想して運用方針を大きく変える必要はありません。
株価上昇による運用評価額の増加にも浮かれず、
心を落ち着けて当初の資産運用方針に沿って淡々と投資を続けていくことが重要です。

そして、市場環境のよい時ほどリスク許容度や全体の資金計画を確認しておくことをお勧めしています。
具体的には、以下の3つがポイントになります。

1.現在の投資総額から想定される最大損失額はいくらか、精神的に許容できる範囲内か。
2.ライフプランやキャッシュフロー計画に沿って、今後数年間に必要となる資金が確保できているか。
3.株式市場が大幅下落した時には追加投資できる余力が残っているか。

市場環境が悪化し株式市場の下落が続くと、投資計画の修正がしづらくなります。
株式市場が高値を更新するような時ほど冷静にリスクを取り過ぎていないか確認し、
取り過ぎているのであれば、運用資産を一部売却しておくなどの対応をしておく必要があります。

もし市場環境が変わっても基本スタンスを変える必要はありません。
分散投資を徹底しながらリスク管理をしっかり行うことで、どのような環境にも対応できると考えています。

市場環境が好調な時は誰でもリターンが得られますが、
調整局面での対応によってその後の投資成果は大きく変わってきます。
今年はより一層リスクコントロールの重要性が高まる1年になるかもしれません。

リバランスの方法と頻度

前回のブログでは、リバランスの必要性について書きました。

リバランスを定期的に実行するとリスクを一定にコントロールすることができて、
パフォーマンスの改善にもつながるとお伝えしました。

そこで、今回は具体的なリバランスの方法やどのくらいの頻度で実施したら良いのかまとめていきます。

  • リバランスの方法とは

リバランスの方法は大きく分けて3パターンあります。
方法1.値上がりした資産の売却(利益確定)+値下がりした資産の追加購入
方法2.追加資金により値下がりした資産の追加購入
方法3.値上がりした資産の売却(利益確定)

投資額をそれ以上増やしたくない場合は<方法1>、
手元に余裕資金があり、投資余力を残している場合<方法2>、
運用資産を取り崩しながら使っていきたい場合は<方法3>になるでしょう。
他にも売買に伴う手数料や税金の影響も考慮する必要があります。
最もシンプルで管理しやすく効率的なのは
<方法2>の追加購入のみによってリバランスをしていくことだと考えていますが、
どの方法も厳密に実行する必要はなく、状況に応じて組み合わせながら実行することで問題ありません。

  • どの位の頻度でリバランスをすべきか

リバランスを実施するタイミングについては2つの考え方があります。

1つ目は、年1回など一定期間ごとにリバランスします。
あらかじめ決めておいた時期に、運用状況に関わらず実行するため、感情に左右されず機械的な見直しが可能となります。

2つ目の考え方は、運用状況に応じて適宜リバランスをします。
例えば、「当初の配分比率から1割以上ズレが生じたらリバランスをする」などといった
基準を決めておき実行する方法です。
この方法では市場環境の変化に応じて迅速な調整が可能となります。

私は2つの方法を組み合わせて、
「1年に1回は定期的に実行し、それ以外にも2割以上のズレが生じたらその場合も実行する」
ということを基本的にはお勧めしています。

しかしながら、リバランスの頻度や方法にも絶対的な正解はありません。
資産運用は無理なく継続して行うことが極めて重要なので、
厳密に資産配分比率を維持することに拘りすぎない方が良いと考えます。

前回もお伝えしましたが、リバランスより大切なことは
ライフプランやキャッシュフロー(家計収支)の変化に応じたリアロケーション(資産配分比率の見直し)です。
5年に一度くらいは、金融資産全体に占める投資資産の比率は適切なのか、
運用資産の配分は効率的なのか確認することをお勧めしています。

リバランスの必要性

長期間にわたって資産運用を継続していくためには「リバランス」が必要と言われています。
そこで、今回はリバランスの必要性やどのくらい厳密に実行するべきなのかまとめていきます。

リバランスとは
株式やETF、投資信託の価格は日々変動しますので、時間の経過に伴う相場変動により、
資産運用を始めた当初に組んだ資産配分比率からズレが生じてきます。
このズレを解消するために、比率の高くなった資産を一部売却したり、比率の低下した資産を買い足したりすることで、
資産配分比率を元の配分に調整することをリバランスといいます。

なぜリバランスが必要なのか
リバランスが必要な理由は主に2つあります。
1つ目の理由は、リスクをコントロールするためです。
リスクを低減し安定的な資産運用に取り組むためには、
株式や債券などの異なる値動きをする資産に分散投資することが重要です。
しかしながら、最初にしっかりと資産配分を決めてポートフォリオを構築し分散投資をしても、時間の経過に伴い相場は変動するため、
保有する資産構成比に偏りが発生した場合には想定以上のリスクを取った状態になってしまったり、
反対に期待したリターン水準に達しないポートフォリオになってしまったりします。
資産運用において価格変動を避けることはできませんので、ズレが生じた資産配分を元の資産配分に戻し、
許容できる範囲内にリスク水準をコントロールするためにリバランスを実行する必要があります。

2つ目の理由は中長期的な投資パフォーマンス向上のためです。
異なる値動きをする資産に分散投資した場合、ある資産は大きく値上がりして利益が出ている一方、
他の資産は大きく値下がりしてしまう状況が起こり得ます。
この状況でリバランスを行うということは、値上がりした資産を売却して利益を確定し、
その資金で値下がりした資産を安く購入するということになります。
どの資産も右肩上がりに上昇し続けることはありませんので、定期的にリバランスを行うことで、
パフォーマンスを改善できる可能性が高くなります。

リバランスを忘れてしまったらどうなるか
リスクを適切にコントロールし、パフォーマンスを向上させるためにリバランスは必要ですが、
リバランスをしなかったとしても致命的な問題になるわけではないと私は考えています。
そもそも、当初決定した資産配分が絶対的に正しいわけではありません。
分かりやすさや管理しやすさを重視して資産配分を決定することもありますし、
前提となる期待リターンやリスクも専門家によって異なる水準を想定していることがあります。

リバランスより大切なこと
個人の資産運用においてリバランスより大切なことは、
ライフステージや資産状況の変化に応じたリアロケーション(資産配分比率の見直し)です。
資産形成に取り組む30~40代、収入も増えて資産構築も進んできた現役バリバリの50代、退職後のセカンドキャリアを見据えた60代では、
それぞれ資産運用において許容できるリスクの大きさも変わってきます。
保有する資産の規模やキャッシュフロー(家計収支)が変化しているのに
投資方針が同じままでは適切な資産運用ができているとはいえません。
それに、金利水準などのマクロ環境も変化している可能性があります。

数年間、リバランスをしなかったとしても人生を通じた資産運用にそれほど影響はありませんが、
5年・10年経過してライフステージや資産状況、マクロ経済環境が変化している場合には
現在の資産配分比率が適切かどうか確認して見直しを進めていくことは極めて重要になります。

資産運用で失敗してしまう3つのポイント

元プロ野球監督、野村克也氏の座右の銘として話題になった「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉があります。
(この言葉は野村氏の創作ではなく、松浦静山の剣術書『剣談』からの引用らしいです)

これを資産運用に当てはめて考えると、成功する方法は一様ではないし、ラッキーで上手くいくこともありますが、失敗するパターンには一定の法則があり、これをやるとだいたい失敗すると思われることは確実に存在します。

私もこれまで10年以上、資産運用に関する相談を受けてきましたが、上手くいっていない人や失敗してしまった人は、「失敗するべくして失敗している」ように感じています

そこで今回は、資産運用で失敗してしまう3つのポイントを整理してみます。

1.良い結果しか想像していない
最悪の場合にどのくらい損失が発生するのか把握しないまま投資している人が多くいます。
確実に成功する投資など存在しませんので、リターンが期待できるということは損失が発生する可能性もあるはずです。

営業担当者の言葉を鵜呑みにしているケースも多くありますが、営業担当者がリスクについて説明していたとしても、良いイメージだけが残っていて正確に想定される損失額を理解できていないで失敗することはよくあります。
まずは、最悪の事態を想定して発生する可能性のある最大損失額を覚悟しておくことが重要です。

2.コスト意識が低い
金融商品を組成し、提供する金融機関も営利企業です。
金融商品を紹介する営業マンもボランティアではありませんので、金融サービスを利用するには必ずコストがかかります。
しかしながら、日本では金融商品や金融サービスの利用に関するコストを意識しないまま投資をしている人が多くいます。
コストを開示していない金融商品やサービスも多くありますが、まずはその金融商品を販売する金融機関や担当者がどういった収入を得ているか意識することが重要です。

3.商品について理解していない
金融商品の仕組みを全て理解することは容易ではありませんが、だからといって理解せずに投資することはやはりお勧めできません。
仕組みが複雑で分かりにくい商品やリスクの所在と大きさが明確でない商品を避けるだけでも失敗は避けられます
金融リテラシーが高い人はシンプルな仕組みの商品を選り好んで利用しています。
仕組みを理解しにくいような複雑な商品はコストの高い粗悪品だと考えても問題ありません。

以上です。
資産運用で失敗するには必ず理由があります。
今回紹介した3つのポイントを抑えるだけでも、失敗するリスクは大きく減らせます。
約1年前のブログにも『金融商品を利用する際に理解しておくべき3つのポイント』について書きました。
関心があれば、こちらも併せてご確認ください。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/cE0ZNxup/

ソーシャルレンディングを利用した投資について

少額、短期で高配当が期待できるとソーシャルレンディングに関心を抱く人が増えているようです。
私も質問を頂戴することが増えていますので、今回はソーシャルレンディングについてまとめてみます。

ソーシャルレンディングとは
運営事業会社が投資家から資金を集めて、銀行融資が受けにくい借り手に貸して金利収入を得る投資です。
投資先は、不動産や太陽光発電所、中小事業所、海外マイクロファイナンスなど多岐にわたります。

メリット
ソーシャルレンディングを利用するメリットは短期投資で高利回りが期待できるところでしょう。
しかも、少額から投資可能です。
1年程度で満期を迎える投資案件も多く、事前に利回りが想定できていることも魅力的です。

主な3つのリスクと注意点
ソーシャルレンディングを利用する際のリスクは主に3つ(流動性リスク、デフォルトリスク、運営者リスク)あります。

◎流動性リスクとは
一度投資してしまうと途中で出金や解約ができません。満期となる償還時期が延長されてしまうこともあります。

◎デフォルト(債務不履行)リスクとは
借り手が約束通り利息支払や元本返済をしてくれないリスクです。
運営者が借り手を審査して延滞時に督促したり、破綻した時には資金回収に取り組みますが、
最終的な損失は投資家が負担することになります。

◎運営者リスクとは
運営事業会社が不適切な融資をしたり資金を流用したりするリスクです。
情報公開が義務付けられていなかったこともあり、実際に多くの不祥事が発生し、金融庁も注意喚起をしています。
運営事業会社が破綻すれば投資家の資金回収は難しくなりますので、運営会社の見極めも重要です。

◎注意点
利回りの妥当性を投資家は判断できるのでしょうか。
通常はリスクの大きい案件ほど高い利率が適用されますが、提示されている利率が本当にそのスクに見合っているのでしょうか。
債券の発行体のように格付を取得しているわけではありませんので、
リスクの大きさが把握しにくく、リスクに見合ったリターンが得られているとは限らない点には注意が必要です。

投資信託を利用した資産運用との違い
リスクコントロールを重視する投資信託による運用と異なり、
デフォルトが発生した場合の損失はどんなに時間をかけても取り戻すことができません。
インデックス・ファンドを使って世界中の株式市場に分散投資している場合には、
大きく評価額が下落することはあっても、時間さえかければ評価額は回復し成長していく可能性が高くなります。

実はリスク分散がしにくい
現在のように世界的に景気がそれほど悪くない状況であれば、同時に多くの案件がデフォルトすることはありませんので、
複数の投資案件に分散して利用することでリスクコントロールが可能です。
しかし、世界的に景気が悪化し金融危機が発生すると多くの案件で同時にデフォルトが発生することが予想されます。

まとめ
ソーシャルレンディングは短期で高い利回りが期待できることは魅力的ですが、リスク分散がしにくく、
デフォルトするときは一気に複数の案件でデフォルトする可能性が高いことには留意する必要があります。
また、運営事業者の見極めも重要です。
そして、一度デフォルトが発生すると時間かけても損失は取り戻せないことを考慮すると、
いくら高い利回りが得られたとしても相応にリスクの高い投資だと覚悟しておいた方が良さそうです。

一方で、寄付や社会貢献、社会還元に近いような性質もありますので、
投資収益を得るだけでなく、意志あるお金の使い方をしていきたいと考えている場合には有効な選択肢になります。

ヘッジファンド投資の考え方

ヘッジファンドとは、様々な取引手法を駆使して相場が上がっても下がっても利益を確保することを目指す投資対象です。
誰でも投資可能な“公募”の投資信託を通じてヘッジファンドに投資することもできますし、
一部の機関投資家や富裕層など限られた人から資金を集めて運用する“私募”のヘッジファンドも存在しています。

リーマンショックのような相場の下落局面でもプラスのリターンを実現するヘッジファンドも存在しました。
私も外資系金融機関に所属していた頃はそのようなヘッジファンドへ投資する投資信託を数多く販売した経験もあります。
しかし、そのような相場下落局面でも着実にリターンを稼いでいたファンドが
その後も高いパフォーマンスを維持できたかというと、そんなことはありませんでした。
市場環境が改善してくると株式インデックス・ファンドに大きく負けてしまうものばかりです。
つまり、どんな局面でも利益を出し続けることは簡単なことではありません。

もし仮にそのよな優秀なヘッジファンドが存在するとしても、それを事前に見抜くことは難しく、
さらに、適切なタイミングでそれを売買することは不可能に近いことです。

結果的に優秀な成績を残しているヘッジファンドは注目を集めますが、
一方で大きく下落してひどい成績のヘッジファンドも多数存在しています。
金融機関の営業マンは運用成績の良さをアピールしながら投資提案をしてきますが、
過去の運用実績は必ずしも将来のリターンを保証するものではありません。
これはアクティブ・ファンドに対しても同様です。
もちろん相場変動を乗り越えて市場平均を大きく上回ってきたアクティブ・ファンドもありますが、
10年間成績の良かったファンドが次の10年も成績が良いかというと、ほぼ無相関というのが多くの実証分析の結果です。

アクティブ・ファンドと異なるのは、
ヘッジファンドは運用手法を公開しないことも多く、
どんな運用をしているのかブラックボックスで見えなくなっています。
運用成績を信じて投資をしたら、それが虚偽であったという事例もあります。
高いリターンをアピールして投資を勧誘する投資詐欺とほとんど変わりません。

また、インデックス・ファンドなどに比べると、購入時手数料や値上がり益に対して支払う成功報酬の率も高く、
高コストというデメリットもあります。

株式や債券などの伝統的な資産クラスとは異なる値動きをするヘッジファンドに投資することで
分散効果が期待できることもあります。
しかしながら、投資内容が複雑で理解できないものや
ブラックボックスで公開されていない金融商品への投資は避けておくべきだと考えます。
相場下落局面で儲けることよりも後悔するような事態を避けることが重要だと考えるからです。

誤解だらけの公的年金

金融庁の報告書発表から1ヶ月以上経ちますが、いまだに「老後2000万円問題」について多くの報道を目にします。
証券口座の開設者数も増えているようですし、
多くの人が主体的に資産形成に取り組むようになっているのは良い事だと思います。
しかしながら、先日の参議院選挙での各党の公約を見ていても、
年金制度について正しく理解できていないものが多くあります。
そこで、今回は公的年金についてよくある誤解を中心に説明します。

<公的年金とは>
そもそも公的年金とは、貯蓄制度ではなく保険制度です
日本経済新聞社編集委員の田村正之さんは「年金制度は人生のリスクに備えるお得な総合保険である」
説明していますが、まさにその通りだと思います。

年齢を重ねて就労による収入が獲得できなくなった人や突然障害を負ってしまったり、
一家の大黒柱が亡くなってしまった人にお金を支給するためのセーフティネットです。
相互扶助のための保険制度だからこそ国民年金の保険料納付は20歳以上の全国民が負担する義務になっていますし、
保険給付には税金も投入されています。
国民年金の上乗せである厚生年金では、企業が従業員の保険料の半分を負担しており、
日本社会に属する個人と企業で社会全体の保障制度を支えているのです。

<年金制度は維持可能なのか>
現在の年金制度は、自分が積み立てたお金を将来の自分がもらう「積立方式」ではなく、
今の現役世代が払った保険料が受給世代の年金として支給される「仕送り方式(正確には賦課方式と言います)」です。
確かに「仕送り方式」では少子高齢化によりいずれは制度が破綻するように思えますが、そんなことは起きません。
人間はいつか亡くなるため、受給世代も永遠に増え続けるわけではありませんし、
人口構成の変化は確実に予測可能なことなので、税金で負担する割合を引き上げたり、
物価上昇率に比べて給付額を抑制する「マクロ経済スライド」という仕組みを導入することで対策済みです。
さらに、150兆円という莫大な積立金もあります。
これはこれまで集めた保険料を将来の年金支払いに備えて積み立て、運用してきた資金であり、
年金支払いの財源として確保されています。

<現役世代は払い損なのか>
社会のセーフティネットなので個人の損得で考えるのは正しくありませんが、
あえて損得で考えたとしても公的年金はかなりお得な仕組みです。

最大のメリットは亡くなるまで給付を受けられる“終身”年金だということです。
どんなに長生きしても一定の給付が受けられます。
しかも、物価が上昇すればある程度受給額も増える仕組みになっています。
これは民間の金融商品では到底実現できない機能です。

今後の経済成長率などによっても変わりますが、
60歳時点の平均余命である83~85歳まで生きると想定すると、
現在の40歳では支払った保険料の2.4倍、50歳では2.8倍、60歳では3.2倍の金額がもらえます。
税金が投入されていることもあり、約10年も受給すれば個人で負担した保険料を上回る給付が受けられるような設計になっています。
しかも、平均余命より長生きすればさらに長生き保険としてのメリットが受けられます。

<まとめ>
今回は公的年金制度についてのよくある誤解について説明しました。
年金制度について正しく理解することで、
年金不安を煽って誤った情報を提供しながら金融商品や不動産を売り込む営業マンに惑わされることがなくなります。
そして、さらに大切なことは、公的年金の受給額は個人の選択次第で大きく変わるということです。
各自が年金を増やすためにできる対策をとっておくことが重要になります。

『コア・サテライト戦略』による資産運用

今回は資産運用における『コア・サテライト戦略』についてまとめていきたいと思います。

運用資産の大半を占め中核となる「コア」部分は伝統的資産と言われる株式と債券でポートフォリオを構成し、資産の安定的な成長を目指します。

一方で、運用資産の一部「サテライト」部分では積極的に利益を狙って投資対象を広げていく運用戦略のことをいいます。

海外の多くの投資家が取り組んでいる方法であり、機関投資家と呼ばれる多額の資金を運用する法人の多くが採用している戦略です。

そもそも、資産運用は、効率性を追求してまともにやればやるほど、退屈でつまらないものになります。
なぜなら、資産運用の王道は、
1.十分に分散された
2.低コストのポートフォリオに
3.時間分散を計りながら
4.長期投資をする
ことだからです。

特定の資産に偏らないように国内外の株式と債券に幅広く分散させて、低コスト商品を使って、タイミングも分散しながら、じっくり長期にわたって投資するということです。
もう少し簡単にいうと、「資産運用の王道は、幅広く分散して長期で続けるだけ」です。

値動きが大きくて上昇しそうな株式を選別し、タイミングを計って売ったり買ったりするといった、ゲームのようなスリリングな取引は一切必要ありません。
経済ニュースから市場動向を予想して、値上がりが期待できそうな通貨や成長しそうな国を探す必要もありません。

こうした一見面白みに欠けるシンプルな資産運用でも、長期で継続すれば相応のリターンは稼げるはずです。
そして、これを実践していると、損する可能性も極めて低くなります。
実際に、様々なデータが国際分散投資による長期運用の有効性、確実性を証明しています。

そして、機関投資家の運用資産の中心となる「コア」部分もこういった王道と言われるシンプルな投資により構成されているのです。
海外では個人投資家もアドバイザーのサポートを受けながら当然のように、この王道スタイルで運用に取り組んでいます。

しかし、日本でこういった世界標準の資産運用に取り組めている人は少数派です。
「コア」となるはずの先進国の株式や債券を中心としたポートフォリオではなく、本来は「サテライト」に位置付けられるような資産ばかり保有しています。
具体的には、ブラジル・トルコ・南アフリカなどの新興国通貨や豪ドルなど資源国通貨、仕組債などデリバティブ(金融派生)商品、流行りのテーマに沿った投資信託などです。
こうなってしまっている理由は、金融機関が手数料を稼ぎやすくて、売りやすい商品ばかり売っているからです。

趣味で投資を楽しみたいという一部の人を除くと、多くの人にとって人生における資産運用の優先順位はそれほど高くないはずです。
誰もが資産運用に取り組むことは必要な時代ですが、興味がなければ、
必要以上に時間や労力を費やす必要はなく、コアとなる資産のみを保有することでも十分だと考えます。
まずは「コア」となる資産を作り、興味関心があれば「サテライト」部分で
更なる収益性アップや楽しみを求めてみてはいかがでしょうか。