高金利通貨での運用はお得という誤解

最近も銀行や証券会社、保険会社の営業担当者は外貨建ての金融商品の販売に力を入れているようです。
特に日本の金利に比べて高い金利水準の国、オーストラリアやニュージーランド、トルコや南アフリカ、ブラジルなどの通貨で運用する商品です。
確かに、金利水準だけを見れば、こうした高金利国の通貨で運用する商品の方が有利に思えます。
それに、「金利が高いほうが有利」というのは非常に分かりやすいロジックなので、
そのままセールストークを信じてしまい、高金利通貨で運用する金融商品を買ってしまう人が多くいます。
しかしながら、「高金利だからお得」というのは多くの投資家が勘違いしている誤解なのです。

そこで、今回のブログでは「高金利通貨はお得ではないばかりか、長期的には下落しやすい」実態について
説明したいと思います。

為替市場の動向は、短期的には2国間の金利の影響を受けやすいのは事実です。
例えば、A国の政策金利が引き上げられると、日本との金利差が広がり、
A国の通貨が上昇し円安が進みやすくなります。
しかし、それは「高金利だから長期的に上昇し続ける」ということではありません。
新興国など金利が高い国の経済は、物価上昇のペースが速く、そのペースを抑えるためにあえて金利を高く設定しています。
物価上昇、つまりモノの値段がどんどん上がってしまうと、同じ金額で買えるモノの量が減っていきます。
それは通貨の価値が下落していることを意味します。

したがって、金融の専門家の間では、「長期的には、高金利通貨は下落しやすい」という考え方が常識です。
それにもかかわらず、金融機関の営業担当者の中には、
「高金利通貨は人気があるので、金利収入だけでなく、為替の上昇も期待できますよ」と話す人までいます。

もちろんタイミングによっては高金利通貨への投資で大きなリターンを得られることもありますが、
基本的には「高金利の国の通貨は価格が下がりやすい」、つまりいくら金利がたくさん受け取れても、
通貨の下落によって最終的には儲からないことが多いという結論は多くの人が知っておいたほうが良いと思います。

相場変動に負けずに資産を増やす方法

昨年末にかけて株式市場は大きく下落しましたが、
今年に入ってからの3ヵ月間でだいぶ回復してきました。
国内の株式市場は大幅下落前の12月中旬と同じ水準まで、
海外株式市場は11月上旬と同じ水準まで株価は反転上昇しています。

年末の大幅下落の際には、それまで大きく出ていた利益が縮小し、
弊社のお客様の中にも「ここまで短期間で下がるのか」と改めて驚かれた方もいらっしゃいました。

そこで、今回は株式市場が大きく変動しても長期でじっくり運用すれば
最終的には儲かる可能性が高い理由や市場変動に負けずに資産運用を続けるポイント
をまとめていきます。

株式は有価証券と言われるように価値がある資産です。
しかも、価値が増加していく仕組みになっています。
企業は利益を上げると一部を配当金として株主に支払い、
残りは内部留保として株主資本に加えられ、株式の価値が増加していきます。

ただし、特定の企業の株式しか保有していないと、
運悪くその会社が倒産してしまうかもしれませんし、継続的に利益を稼いでいけるとは限りません。
そこで、世界中の企業の株式に幅広く分散して投資しておく必要があるのです。

世界中の幅広い企業の株式に投資した場合のリターンは
長期的にはGDPの成長に連動していきます。

世界経済はゆっくり成長しています。
世界の人口は増えていますし、発展途上国や新興国の人々の生活も確実に良くなっています。
世界的にはインフラ投資が起こり、イノベーションも進み新しい商品やサービスが次々と生まれています。
したがって、
一時的に経済成長が減速することはあっても成長が止まってしまうということは考えにくいのです。
もちろん短期的には大きな変動がありますが、
長い期間投資を継続することによって経済成長率並みの収益が得られるはず
なのです。

しかしながら、投資を継続することは簡単ではありません。
私はこれまで1000人以上の資産運用への取り組み方を見てきましたが、
投資経験があまりないうちは不安に感じて投資を止めてしまう人や、
逆に投資金額を増やし過ぎてしまいリスクを取り過ぎてしまう人がたくさんいます。
リスクをコントロールしながらきちんと投資を継続できている人はそれほど多くありません。

大きな下落局面が到来しても落ち着いて投資を継続できるようにしておくことが重要です。
弊社では想定される最大損失額を必ずお伝えして、
いくらまでであれば一時的な損失に耐えられるかを確認し投資金額や資産配分を決定しています

相場変動に負けずに資産を増やしていくためには以下の2点が特に重要なポイントになると私は考えています。
・最悪の事態を想定できているか
・当面の生活費など流動性資金を確保できているか

平成31年度税制改正大綱のポイント

昨年12月に平成31年度税制改正大綱が公表されました。
今回の改正は今年の10月に見込まれる消費税の増税に伴い、
大幅な駆け込み需要やその反動減を和らげるための策に焦点が置かれています。

今回は個人資産に影響のある改正ポイントを2点まとめていきます。

1.住宅ローン減税の控除適用期間が3年間延長
消費税増税により10%適用の住宅を取得し、
平成31年10月1日から平成32年12月31日に居住開始した場合に、
住宅ローン減税の控除適用期間が延長されます。
現行の10年間の適用(ローン残高の1%)に加えて、
11年目から13年目まで以下のいずれか低い方の金額が控除できます。
(a)住宅ローンの年末残高(4,000万円を限度)×1%
(b)建物購入価格(4,000万円を限度)×2%÷3

この計算式は、消費税増税により負担増となる2%分を3年間延長することにより
還元しましょう、という意味です。

他にもすでにある住宅取得等資金贈与の非課税制度も新築住宅については優遇されていて、
消費税10%で取得すると最大で3000万円(!)の贈与が非課税となります

この住宅ローン減税の拡充のみで、消費税率引き上げ分が全てカバーされるわけではありませんし、
増税後には不動産価格が下落することも多いため、
増税だからといって住宅を買い急ぐ必要はないと思います。

しかし、期間が延長される住宅ローン減税と住宅取得等資金贈与の非課税枠の最大額を併用したい場合は、
31年4月から32年3月までの間に売買契約を締結し、
住まいの引き渡しと居住開始は31年10月1日から32年12月31日までとする必要があります。
贈与資金も使って新築住宅の取得を予定している人にとっては今年と来年は大きなチャンスといえます。

2.教育資金、結婚・子育て資金非課税制度の延長
平成31年3月31日に適用期限を迎える「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」と
「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」が共に平成33年3月31日まで2年延長されます。
一方で、受贈者の所得要件(1,000万円)がどちらも追加されました。
つまり、高所得者への贈与については適用できなくなります。
また、23歳以上の受贈者の教育資金の範囲が限定されました。

以上です。他にも、仮想通貨に係る所得の計算方法が明確化されたり、
海外赴任中のNISAの取扱方法の変更や、
自動車税の軽減、配偶者居住権の創設に関する相続評価方法の制定などがあります。

全体として今回の改正は減税につながるものが多いようです。
減税になるからという理由だけで無理に制度を活用する必要はありませんが、
ライフプランを考慮したうえで、メリットが大きく使える制度があれば有効に活用していくことをお勧めします。

2019年の投資に対する考え方

2018年は年末にかけて国内外の株式市場が大きく下落し、日経平均株価の年間騰落率は7年ぶりのマイナスでした。
中でも特に新興市場の下落が大きく目立ちます。
海外株式は国内に比べると下落率は比較的小さかったですが、多くの株式市場が下落した1年でした。

2019年の株式市場も波乱の幕開けですが、
ここは心を落ち着けて当初の資産運用方針に沿って淡々と投資を続けていくことが重要になります。
(資産運用方針を定めていないで取り組んでいる場合は早急に定める必要があります)

今後の見通しとしても、米中貿易摩擦や世界景気の先行き不透明感が市場心理を冷やす構図は変わっていません。
国内では10月に消費増税も予定されていますし、ネガティブな材料が多そうです。

弊社のお客様には、相場下落時に追加投資できるように投資金額を抑えめにして投資余力を残しておくことをずっとお伝えしてきました。
当面はすぐに反転上昇することは期待しにくい状況ですが、マーケットが大きく下落する悲観時期は、
長期投資家が将来の果実をさらに大きく育てることができる絶好のチャンスです。
是非、今年は追加の投資を検討していただきたい時期であると私は考えています。

株価下落や景気悪化のニュースを耳にするたびに、不安に感じる方が多いことも十分に承知しています。
しかし、上がった相場は必ず下がるし、下がった後にはまた上がるのが株式市場です。
どこまで下落が続くのか、下落がどのくらい大きくなるかは誰にも分かりませんが、
確実に言える事は、数ヶ月前の高値で買うよりも、調整している今買う方が、儲かる可能性が高いということです。

これから10年単位で考えれば、株式市場が再び今の水準より高くなっている可能性は高いと言えます。
ただし、個別銘柄や特定の地域の株式市場に集中投資するのではなく、世界中の株式市場に幅広く分散投資すること。
そして、タイミングを計って最安値を狙うのではなく、時間の分散も図りながら継続的に積み増していくことが重要です。

2008年のリーマンショック発生時、私は外資系金融機関で営業の仕事をしていましたが、
多くの人は相場が下がり続けることに不安を感じて、保有している投資信託を売却していきました。
一方で、そのような局面でも、少しずつ買い増しを続ける顧客がほんの数名いました。
彼らが数年後には大きなリターンを手に入れたのは言うまでもありません。

世界の労働人口は増え続け、イノベーションにより新たなサービスが生み出され、
テクノロジーによって世界の労働生産性はますます向上していくことを考慮すれば、
世界経済が中長期的に成長していく可能性は非常に高く、世界経済の成長が継続していくことを前提に考えると資産運用の方針を変える必要はありません。

2019年は短期的な変動に振り回されることなく、中長期的な視点で資産運用を続けていくこと、
余力がある人は少しずつ運用資産を積み増していくことが、賢明な選択だと言えるのではないでしょうか。

投資信託が値上がりしても、投資家はそれほど儲かっていない?!

投資信託を評価する指標として「インベスターリターン」と呼ばれる指標が注目されています。

「インベスターリターン」とは、実際に投資信託を購入した投資家が得た平均的リターンを示します。
これに対して「通常のリターン」は投資信託の基準価格の騰落率であり、投資家の実際の売買とは無関係に計算されます。
ファンド運用者の腕前の比較評価に使うのは通常のリターンの方です。

当然ですが、投資家にとっては「インベスターリターン」が大事です。
株式市場がどんなに上昇しても、投資信託の価格がいくら上がったとしても、投資家が実際に儲からないと意味がありません。

しかし、残念ながら多くの投資信託は「インベスターリターン」が「通常のリターン」を下回っています。
つまり、投資信託の運用成績ほどは投資家個人は運用成果を得られていないということです。

ある有名な人気ファンドも運用開始以来のリターンは年率20%を超えているにもかかわらず、
「インベスターリターン」は4%程度しかありません。
(モーニングスター社のサイトなどで各ファンドのインベスターリターンは誰でも確認できます)

投資信託を利用するにあたり、「高値掴み」や「安値売り」をした人が多くいるほど、インベスターリターンは低下します。
本当は安い時に買って、高い時に売るのが良いに決まっているのですが、現実は、その逆になっています。
下がっている時に慌てて売ってしまい、上がっている時に乗り遅れまいと慌てて買うという投資家の非合理的な行動がパフォーマンスを大きく下げているのです。

私も15年ほど個人投資家の動向を直接見てきました。メディアの影響もあり、
多くの人が株価上昇によりピークに近づくころ頃に積極的に投資したくなり、相場が悪くなり株価下落が続いた局面で投資を止めようとします。

そして、手数料を稼ぎたい金融機関の営業姿勢がそれを助長します。
既にかなり価格が上昇していて更なる上昇余地が限定的であったとしても、目の前の販売実績に釣られて顧客の背中を押してしまいます。

下落局面では、不安になっている投資家に対して冷静な判断を促すよりも、
一旦売却して次の投資チャンス(=新たな販売手数料を稼ぐチャンス)に備えることお勧めしてしまうのです。

そして、市場回復が明確になり相応に値上がりした頃に再度投資をすることになります。
結果的には、何も売買せずに投資を継続していればより良いパフォーマンスになっていたケースが圧倒的に多いのですが、多くの人はそれにすら気付いていません。

人間は感情に流されてしまい非合理的な行動をしがちであることは行動経済学の分野で明らかにされています。
運用方針をしっかりと定めて、ブレずに淡々と運用を続けることが大切なのですが、
特に投資経験が浅い投資家にはそれはすごく難しいことかもしれません。
そんな時にこそ、客観的な立場から冷静に助言ができる資産運用アドバイザーの存在意義があるのではと感じます。

株価急落時の対応のポイント

2018年10月は世界的に株式市場が大きく下落しました。
日経平均株価も一時3,000円以上下落しています。そこで今回は株価急落時の対応方法についてまとめたいと思います。

まず、メディアの報道に煽られず冷静に対応することが重要です。
「日経平均大幅続落 1000円安」などと報じられますが、下落率は5%未満だったりします。
5%程度下がることは頻繁にあることだと認識する必要があります。
しかし、今回は株価が1カ月で1割以上下がっていますから、一応「大幅下落」と言っても良いとは思います。
ただし、これも1年に1回くらいは起こるものだと覚悟しておくべきでしょう。

次に対応方法を考えてみたいと思います。

まず、下落理由を確認します。
企業業績の悪化や経済成長率の鈍化など、実体経済が大幅に悪化していることが判明して下落するケースもありますが、
景気が悪くなるとしても徐々にマイナスの材料が増えていき株価水準を切り下げていくことが通常なので、
景気悪化を理由として一気に下落することはそれほどありません。

多くの場合は市場心理の悪化や上昇が続いたことによる調整局面として株価が下落するケースです。
10月の下落もそれまでの上昇ペースが速かったことによる、調整局面だったと私は判断しています。

この場合は、下落が長引く可能性は低く、何かのきっかけで反転する場合も多くあります。つまりは、大きな下落が発生しても慌てて売る必要はないということです。

むしろ、リスクコントロールを重視して投資余力を残していた投資家は、
買い増しを検討することが有効だと考えます。

積立投資の設定を利用したり定期的に買い増しを進めている場合には、
大幅な下落時に投資金額を引き上げて対応することもお勧めしています。

今後も一時的に1割程度の下落は発生するはずです。
いつ、どの程度の大きさの下落になるか事前に予想することは不可能ですが、
その際に慌てることのないように、追加投資の余力を確認し、
現状のアセットアロケーション(資産配分)で想定される最大損失額をもう一度確認しておくことが重要
だと思います。

確定拠出年金の出口戦略(受取のポイント)

今回は確定拠出年金の「出口戦略=受け取り方法」について整理したいと思います。

法律改正により2017年からiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入対象者が拡大し、
加入メリットは以前に比べると知られるようになりました。
一方で、積み立てた資産の受取方法には多くの注意点があります。

なお、iDeCo(個人型確定拠出年金)も企業型確定拠出年金でも基本的に受取に関する考え方は同じため、
今回は確定拠出年金としてまとめて説明します。

確定拠出年金制度は、受取方法の自由度が高いのが特徴です。
受取開始年齢は60~70歳の好きなタイミングを選択できます。
また、受取方法として「年金」と「一時金」を選択できます。
金融機関が対応していれば、年金と一時金の組み合わせも可能です。
年金受取の場合、金融機関にもよりますが、5~20年かけて分割して受け取ることが可能です。
このように様々な受取方法が選択できる確定拠出年金ですが、
どのような形で受け取るのが有利なのでしょうか。
出口戦略を考える際に重要になるのが税金や社会保険料への影響です。

確定拠出年金では積立時の所得控除や運用益の非課税により節税しながら効率的な資産形成が可能ですが、
受取時は基本的には課税されてしまいます。
ただし、「一時金」での受取の場合、退職所得控除が受けられますし、
「年金」受取の場合も公的年金等控除が受けられるため、
実質的には非課税、もしくはきわめて軽い税率となります。

しかしながら、他に退職金などの受け取りがあると、
退職所得控除をフルには受けられない可能性がある点には注意が必要です。
年金受取の場合も公的年金収入や企業年金の受取額と合算し、非課税枠を計算するため、
通常は公的年金だけで非課税枠を超えていることが多く、
確定拠出年金の年金受取分は課税対象となる可能性が高いのが実状です。

また、「年金」受取で雑所得が増えると、所得税や住民税の税率が上がって負担増となるだけでなく、
住民税を元に決定される健康保険料や介護保険料も負担増になってしまいます。

「年金」受取の場合は、金融機関よって振込手数料や口座維持手数料がかかることもあるのでさらに注意が必要です。

したがって、現状では「一時金」受取の方が有利になるケースが多い状況ですが、
今後、税制や金融機関のサービスは変更される可能性もあります。
60歳以降の働き方などライフプランによっても最適な出口戦略(受取方法)が変わってきますので、
税金や金融機関のサービスなどを考慮して総合的な判断が必要になります。

金融商品を利用する際に理解しておくべき3つのポイント

世の中には利用する価値のない金融商品がたくさん売られています。
多くの専門家が否定的な評価をしているにもかかわらず、残念ながら、人気が出てよく売れてしまうことがあります。

そこで今回は、金融商品についてそれほど詳しくない一般の人が商品を選ぶ際に
どのように判断すればいいのか整理したいと思います。

まず大原則として、「分からないものは買わない」ことです。
仕組みを理解できない商品にもかかわらず、「儲かりますよ」と勧められるままに購入して、
期待とは異なる結果になってしまっても営業マンを責められません。

しかし、完璧に理解するまで買えないとなると、何も購入できなくなってしまいます。
それに、「どこが分からないか分からない」という人も多いと思いますので、
最低限、押さえておくべきポイントを3つ紹介します。

1.コスト
その商品を利用する際に直接・間接に負担する手数料の具体的な金額はいくらか。
そして、その手数料が他の商品と比べて高いのか安いのかも知る必要があります。

2.リスクの所在と大きさ
どのような局面でどれだけの損失が発生する可能性があるのか。
金融危機が発生した場合にどの程度の損失が発生するのか、そうなっても回復する可能性があるのか。
仮に回復するとした場合、どのくらいの時間を要するのかも重要です。

3.流動性
いつでも売却して出金できるか。
解約するのに制約がある場合は、その条件や手数料も把握しておく必要があります。

以上です。
この3つのポイントを理解して金融商品を選ぶと、コストが安くてシンプルな商品に行きつくと思います。

過去の運用実績を重視して商品を選ぶべきとの意見もありますが、
私はどんなに素晴らしい実績があっても、将来の運用成果を約束できるものではありませんし、
経済環境も変化していくため、参考程度にしかならないと考えます。

最後に、営業マンの立場や金融機関の姿勢も理解しておくと間違った判断をする可能性を減らせると思います。

金融商品の営業マンは販売のプロであり、プロのアドバイザーではありません。
心理学を勉強したり、どのようにすれば顧客と優良な関係を築き、
購入してもらえるかという営業スキルを磨くことには熱心ですが、
顧客のお金の悩みを解決するための幅広い情報や金融知識を習得できていない営業マンが多くいます。

商品を企画し設計する金融機関の担当者も同じです。
どうすれば顧客の共感を得やすいか、販売担当者が売りやすいか、という視点で必死に考えています。
どんなに顧客にとって価値のある商品であっても、売れて会社の売上に繋がらないと評価してもらえないからです。

目的別の資産運用がお勧めできない理由

家計管理の手段として資金使途別に必要となるお金を把握しておくことは重要ですが、
資産運用においては目的別に分けて管理することはお勧めできません。

しかし、多くの人は「目的別にお金を貯めたり、増やしたりするのは当然じゃないか」と考えているようです。
「教育資金の準備は学資保険で!」とか「老後資産の準備は個人年金保険で!」といった具合に、
目的別にお金を運用したり、金融商品を購入するように勧める金融機関や営業マンが多いからでしょう。
顧客にとってはその方が分かりやすいし、
営業マンにとっても非常にセールスしやすいために考え出された戦略であり、
その結果、多くの人が「目的別に資産運用すべきだ」という思い込みを持ってしまっています。

しかも、目的別にさまざまな種類の金融商品をあれこれ買ってしまい、
結果、高いコストを負担させられているケースが多くあります。

目的別に資産運用するということは、保有資産を小口に分けて運用するということであり、
効率的な方法ではありません。運用はできるだけまとめてした方が合理的だからです。

それに、目的別に運用するためには、資金ごとに運用期限を区切っていくことになります。
必要な時期に予定どおりの金額をきっちりと確保するためには、価格変動の少ない運用にせざるを得ません。
本来はまとまった資金を適切なリスクを取りながら運用していくことでリターンが獲得できます。
資金が必要なタイミングを考慮しながら、
その時の経済環境に合わせて売却する資産を選択していく方が資金を効率的に活用できます。
つまり、資金が必要になる時期が近づいてくるのに合わせて投資している金額を減らしたり資産配分を調整していくのが理想的です。

そもそも、将来の収入や支出の金額・タイミングを正確に予想することはできません。
ライフプラン通りにいかず、予定外の支出が発生する可能性もありますし、
想定していた以上の収入が得られるようになるかもしれません。
だとすれば、目的を決めた貯め方をしたり、金融商品を買ったりしても意味がありません。
すぐに使わない資金をまとめて運用しながら、経済環境やライフプランの変化を考慮して
全体の資産を管理していくことが無駄の無い合理的な運用方法となります

海外で運用する注意点

海外金融機関の金融サービスや投資商品に魅力を感じる人も多いように思います。
何か特別な方法で国内商品より高いリターンが得られるかのような印象があるからでしょうか。

私のところにも海外の業者から業務提携の申し出があり、お客様の紹介を依頼されることがあります。
国内にも海外のヘッジファンドや保険商品を紹介して、多額の紹介料を受け取っているアドバイザーがいますので、
勧誘を受けたことがある人もいるかもしれません。

しかし、たいしたリターンも得られず、資金を引き揚げるために大変な苦労をしている事例も多く聞いています。

そこで、今回は海外で運用する注意点について整理したいと思います。

「海外で運用する」とは、海外の現地金融機関に口座を開設したり、現地の金融商品を利用するケースです。
国内の金融機関を通して海外資産に投資することは、資産運用において不可欠ですし何も問題はありません。

高いリターンが得られる特別なノウハウがあるわけではない

「実績として毎年10%以上のリターンをあげている」というような商品を紹介されることもありますが、
たまたま運用環境がよく10%になることはあっても、
将来にわたって同じパフォーマンスが期待できるわけではありません。
海外の運用会社だから、なにか特別のノウハウや商品があるのだろうというのは誤解です。
高いリターンが期待できるのは、リスクがそれだけ高いのです。
リスクを小さく見せかけているだけかもしれません。
どの国にいても、資産運用における投資手法や投資対象は、変わるものではありません。
当然ながら日本国内でも世界標準の資産運用ができるのです。
(しかし、残念なことに日本の大手金融機関のアドバイザーはそういった方法を教えてくれません)

節税にもなりません

ケイマン諸島やシンガポールなどで運用すれば、税金がかからないというようなイメージもありますが、それも誤解です。
現地で税金がかからなくても、日本人であれば、日本の税制が適用され、本来は国内で申告する必要があります。
これまではバレていないケースもあるようですが、
海外の税務当局との情報交換する仕組みが出来ていますし、今後はそうはいかないでしょう。

コストも高い

日本人向けのサービスや商品だからかもしれませんが、コストもそれなりに負担させられます。
積極的に売り込んでくる商品やサービスは売り手側が儲かるものであると考えておいた方がいいでしょう。

管理が大変

最初は日本語でサポートが受けられたとしても、いつまでも対応してくれるかわかりません。
トラブルが発生すると、英語で直接やりとりする覚悟が必要です。
現地との連絡が取りにくかったり、現地に行かないと手続きができないケースもあります。
そうすると、さらに余計なコストと手間がかかります。
もし本人が亡くなったりすると、残された家族が困ります。
日本に資産を戻す手続きを専門家に依頼することもできますが、かなりの費用を負担することになります。

海外の金融機関で取引していることでステータスを感じる人もいるかもしれませんが、
必ずしも素晴らしい運用成果が得られるわけではありません。
国内の金融機関を通じてシンプルに国際分散投資を実践することが、
様々なリスクを避けながら資産運用で成功する方法だと考えます。