海外で運用する注意点

海外金融機関の金融サービスや投資商品に魅力を感じる人も多いように思います。
何か特別な方法で国内商品より高いリターンが得られるかのような印象があるからでしょうか。

私のところにも海外の業者から業務提携の申し出があり、お客様の紹介を依頼されることがあります。
国内にも海外のヘッジファンドや保険商品を紹介して、多額の紹介料を受け取っているアドバイザーがいますので、
勧誘を受けたことがある人もいるかもしれません。

しかし、たいしたリターンも得られず、資金を引き揚げるために大変な苦労をしている事例も多く聞いています。

そこで、今回は海外で運用する注意点について整理したいと思います。

「海外で運用する」とは、海外の現地金融機関に口座を開設したり、現地の金融商品を利用するケースです。
国内の金融機関を通して海外資産に投資することは、資産運用において不可欠ですし何も問題はありません。

高いリターンが得られる特別なノウハウがあるわけではない

「実績として毎年10%以上のリターンをあげている」というような商品を紹介されることもありますが、
たまたま運用環境がよく10%になることはあっても、
将来にわたって同じパフォーマンスが期待できるわけではありません。
海外の運用会社だから、なにか特別のノウハウや商品があるのだろうというのは誤解です。
高いリターンが期待できるのは、リスクがそれだけ高いのです。
リスクを小さく見せかけているだけかもしれません。
どの国にいても、資産運用における投資手法や投資対象は、変わるものではありません。
当然ながら日本国内でも世界標準の資産運用ができるのです。
(しかし、残念なことに日本の大手金融機関のアドバイザーはそういった方法を教えてくれません)

節税にもなりません

ケイマン諸島やシンガポールなどで運用すれば、税金がかからないというようなイメージもありますが、それも誤解です。
現地で税金がかからなくても、日本人であれば、日本の税制が適用され、本来は国内で申告する必要があります。
これまではバレていないケースもあるようですが、
海外の税務当局との情報交換する仕組みが出来ていますし、今後はそうはいかないでしょう。

コストも高い

日本人向けのサービスや商品だからかもしれませんが、コストもそれなりに負担させられます。
積極的に売り込んでくる商品やサービスは売り手側が儲かるものであると考えておいた方がいいでしょう。

管理が大変

最初は日本語でサポートが受けられたとしても、いつまでも対応してくれるかわかりません。
トラブルが発生すると、英語で直接やりとりする覚悟が必要です。
現地との連絡が取りにくかったり、現地に行かないと手続きができないケースもあります。
そうすると、さらに余計なコストと手間がかかります。
もし本人が亡くなったりすると、残された家族が困ります。
日本に資産を戻す手続きを専門家に依頼することもできますが、かなりの費用を負担することになります。

海外の金融機関で取引していることでステータスを感じる人もいるかもしれませんが、
必ずしも素晴らしい運用成果が得られるわけではありません。
国内の金融機関を通じてシンプルに国際分散投資を実践することが、
様々なリスクを避けながら資産運用で成功する方法だと考えます。

NISAの出口戦略

制度がスタートした2014年からNISA(少額投資非課税制度)を利用している場合、
非課税期間が今年末で満了します。

制度を効率的に活用するには、2018年末までに手続きが必要になるケースがあるため、
どのような選択肢があるのか、まとめておきたいと思います。

NISA口座で運用する株式や投資信託の売却益や配当金は、
通常約20%かかる税金が5年間、非課税になります。
年間の投資上限額は2014年の制度導入時は100万円でしたが、2016年に120万円に拡大しました。

2014年にNISA口座で買い付けた株式や投資信託の非課税期間が、今年末初めて満了を迎えるわけですが、
非課税期間終了後、NISA口座の資産をどうするのかについては複数の選択肢があります。
好きなタイミングで事前に売却して非課税による恩恵を確保したり、
期間満了時に特定口座など課税口座へ移管して継続保有するほか、
ロールオーバーという仕組みを選択して、引き続きNISA口座で運用を継続することもできます。

ロールオーバーすると、2019年分のNISA口座に2014年に投資した資産を移すことになります。
非課税期間をさらに5年間延長できるため、実質的に2014年から2023年までの10年間、非課税で運用が可能です。

ただし、ロールオーバーをするには以下の条件を満たしていることが必要です。
条件1:同一金融機関の「一般NISA」口座への移管であること
条件2:NISA口座を開設している金融機関で、期限までに所定の手続きをすること

現在、NISAの非課税枠は上限120万円ですが、
2014年に投資した資産が120万円を超えていても全額移管できます。
ただし、2019年の非課税投資枠を使うことになるので、2019年に新たに投資することは出来なくなってしまいます。
一方で2014年に購入した資産が80万円に値下がりしていたら、
残り40万円を上限に株式や投資信託を追加で購入可能です。

ロールオーバーするには注意点もあります。
今年から始まった「つみたてNISA」を利用している場合、2019年は利用を中断し、
「一般NISA」に切り替える必要があります。
2つのNISAは同じ年に併用できず、年ごとにどちらかを選択する必要があるからです。
また、2014年以降にNISA口座を利用する金融機関を変更している場合にも必要な手続きがあります。

継続的にNISA口座を利用している場合には、これからは毎年、課税口座へ移管するのか、
ロールオーバーして非課税運用を継続するのか、判断することになります。
投資家によってNISAの使い方が大きく異なるため、保有している商品やその時点の損益状況、
年末に向けた相場展開を総合的に勘案して個々に判断する必要があります。

そもそも、ロールオーバーの手続きの詳細について、金融機関はまだ明らかにしていません。
10月頃に公表されると言われていますので、いずれにしてもその頃に判断をすることになりそうです。

投資信託のよくある誤解

金融庁が個人投資家と意見交換会を定期的に開催しています。
その中で、「投信あるある」をテーマに取り上げて、投資信託に関するよくある誤解を解説したそうです。

以下のQUICKの記事に詳細が載っていますが、
今回はその中から3つ取り上げて、私なりの解説をしてみたいと思います。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/8sr7gg7j/

(念のため、お伝えしておきますが、以下に取り上げたものは全て誤解です)

1.「販売額ランキング上位のファンドは、みんなが買っているので良い商品なのでしょう」
よく売れている商品が良い商品とは限りません。

むしろ、大手金融機関の販売ランキング上位の商品は手数料が高く効率的な資産運用には適さない商品ばかりです。

家電製品のランキングなど消費者が商品やサービスの質を判断できるものを対象としたランキングであれば、
「よく売れている商品=良い商品」となる傾向にあり参考になりますが、投資信託の場合はそうなりません。
投資信託の質をきちんと判断できる一般の利用者はほとんどいないからです。
よく売れている商品のランキングは金融機関が売りたい商品・売りやすい商品を売った結果だと心得ておくべきです。

2.「投信の基準価額は資金流入額が多いほど、多くの人が買うので上がるはず」
多くの人が買っても基準価額は上がりません。

これは投資信託初心者には本当によくある勘違いです。
株式のように発行されている株式数が短期間で変わらない投資対象であれば、需要と供給によって価格が決まります。
買いたい人が多ければ株価は上昇します。
投資信託の場合は投資対象となっている株式や債券の評価額が上がらない限り基準価額は上がりません。

資金の流入が多くなればなるほど上がるのは、純資産額です。
純資産額が急増すると、逆に基準価額は上がりにくくなる可能性もあるので注意が必要です。

実際に最近人気が急騰しているある投資信託については、これまでのような運用を継続することが困難な状況に直面しているものもあります。

3.「インデックス・ファンドは基準価額が高いほうが優秀」
基準価額の水準と投資信託の優劣は関係ありません。

たとえば、国内株式の代表的な指数であるトピックス(TOPIX)との連動を目指すインデックス・ファンドでも9,500円程度のものから26,000円を超えるものまであります。
アクティブ・ファンドでも基準価額が3万円台となっている商品に対して割高なのではと感じて投資を躊躇する方も多くいますが、
単に運用を開始した時期と分配方針の違いで価格に違いが生じるだけです。
基準価額の水準は投資信託選びの判断材料になりません。

※ 拙著『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術』でも、第4章で資産運用の誤解と改善策についてまとめています。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/1vlIehxY/

 

税務当局は個人の全財産を把握できるのか

平成30年度税制改正関連法が3月28日に成立しました。
高所得者にとっては増税となる改正が目立ちます。
そして、日本政府の財政状況を考えるとこの流れは今後も続いていくものと考えられます。

そこで、今回は個人の財産状況を税務署がどこまで把握できるのか整理をしてみたいと思います。

証券会社からマイナンバーの提出を求められた経験のある人も多いと思いますが、
2018年1月からは銀行でもマイナンバーを預貯金口座とひも付ける「付番」が任意で始まっています。
3年間の状況をみて義務化が議論になるそうですが、専門家の間では義務化が既定路線のようです。
将来的に金融機関によるマイナンバー収集が完了すると、税務署に全ての金融取引を把握されることになります。

かつては、所得2000万円超の人は確定申告の際に『財産及び債務の明細書』を提出する必要がありましたが、
未提出でも罰則規定がなく税務署から督促があっても対応しないでそのままになっているケースが多かったようです。
しかし、この『財産及び債務の明細書』は、現在『財産債務調書』と名前を変えて
未提出者に対する罰則規定もあり厳格に適用されています。
対象者は所得2000万円超で「3億円以上の財産がある」か「株式や投資信託を1億円以上保有している」人です。
これにより、資産家に対する税務当局の財産把握はかなり進んできています。

そして、税務当局が最近注力しているのは、国外財産の把握です。
海外の不動産や金融商品への投資を勧める業者も増えているので、私も相談を受けることが非常に増えています。
違法業者も多く、メリット以上にデメリットやリスクが多い案件ばかりなので、
基本的にはやめておくようにアドバイスすることが多いですが、世間一般では利用する人が増えています。
2014年からは国外に5000万円超の財産を持つ場合、
資産内容を記す『国外財産調書』の提出が義務付けられていますが、こちらも未提出の人が多いと言われています。

国際的には税務情報を共有する仕組み「CRS(共通報告基準)」もあります。
各国・地域の税務当局が金融機関から口座情報の報告を受け、自動的に情報を交換するもので、
租税回避地を含む100以上の国・地域が参加していて、日本も2018年9月末までに、この枠組みに加わる予定です。

つまり、近い将来国内資産も海外資産も全て税務署に把握される時代が到来しそうです。
法人の活用や不動産など実物資産への投資により合法的に税金負担を抑制する方法もないわけではありませんが、
抜本的な対応策は存在しません。

対策があるとすれば、税金を払っても資産規模を維持できるように資産を増やしておくことでしょうか。
もちろん、過大にリスクを取って財産を減らしてしまっては意味がありませんので、
リスクをコントロールしながら無理のない範囲で効率的な資産運用に取り組む必要はあります。

個人的には諦めて税金を払う覚悟をした方が良いように思います。

長期投資の有効性

前回のブログでは、分散投資の効果と重要性についてまとめました。
今回は資産運用において、「分散投資」と並んで重要になる「長期投資」についてまとめてみたいと思います。

2月以降、株式市場は変動の大きい相場展開が続いています。
日本も米国も2018年に入ってからの直近高値に対して1割以上下落する場面がありました。
このような短期的な市場変動を利用して金融機関の営業マンは様々な売買提案を行います。
私も銀行員として働いていた時代はこのような市場変動をキッカケに使って営業活動をしていました。
しかし、値動きに乗じてタイミング良く売買を行うことは投資のプロでも難しいことです。
私自身もそういった取引にチャレンジして上手くいったこともありますが、
失敗して損をしたこともたくさんあります。

このような自分自身の投資経験だけでなく、大手金融機関で取引する1000人以上の個人投資家が
相場変動時にどのような行動に出るかを見てきた経験から、
短期的な変動のタイミングを上手く掴んで取引を続けることは不可能に近いと悟りました。
人間はどうしても感情に流されてしまい、合理的な判断ができない生き物だというのも1つの要因です。

つまり、どんなに時間と労力をかけても、的確なタイミングで投資判断ができる可能性は低く、
運用成績も結局は相場全体の動き次第であるということです。
多くの場合、株式市場が上昇していかないことにはリターンを確保できません。

短期的な株価の変動を予想することは不可能ですが、
一方で長期的な株価の変動はきちんとした原理原則があって動いていると私は考えています。
特定の会社の株価も短期的にはランダムに動きますが、長期的にはその会社の企業価値に集約していきます。
企業が利益をあげて成長していく限り株価も上昇していきます。
したがって、価値が継続的に増大していく対象に時間をかけて投資を続けることで
確実にお金を増やすことができます
逆に言うと、成長するものに投資しないと長期で投資していても報われません。

したがって、成長する資産を見つけることが大事なわけですが、
多くの人にとって何(どこの地域、どの会社)が成長するのか選別することは困難です。
そのため、世界経済全体に投資することによって地球規模での経済成長の恩恵を
取り込んで自分のお金を増やしていく方法をお勧めしています。

世界経済の中心的な役割を担う米国の株式市場について、
以下のコラムに「S&P500株価指数」という米国の代表的500銘柄の株価を集計した指数の過去の推移が掲載されています。
長期的に成長を続け1年あたり9%超のリターンとなっていることが確認できます。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/uiNTiYLj/

短期的には上下を繰り返し、リーマン・ショック時には大きく暴落していますが、長期的には右肩上がりです。
米国の実体経済が成長を続けていることで、短期的な上下の値動きを経て米国株式市場は史上最高値を更新しています。
このような長期的に成長していく市場に時間をかけて投資することで確実にリターンが得られるのです

なお、上記の竹中正治氏のコラムは株価下落に対するリスクヘッジや為替リスクのコントロールの重要性についても説明しています。
私がいつも相談者にお伝えしていることを、データも使って解説してありますので、興味ある方は是非ご一読ください。

分散投資の意義

資産運用において分散投資が重要とよく言われますが、
リーマン・ショックのような金融危機が発生すると、
世界中のあらゆる資産が値下がりして「資産を分散しても意味がなかった」といわれたものです。
今月発生した株価急落局面でも同様でした。
しかし、その後の回復局面まで考えると、実はしっかりとした分散投資の効果があります。

つまり、短期的に見ると分散効果が発揮されない局面もありますが、
中長期的に考えると世界中の投資マネーが次の投資対象を探して移動していきますので、
投資対象を幅広く分散しておくことで、必ず分散効果が得られるものと考えられます。

そもそも、「分散投資」の効果とは、
値動きの異なる投資対象を組み合わせることで、全体のリスクを下げることができる効果のことですが、
上がるものと下がるもので値動きが相殺されることによって全体の価格変動が抑えられるということだけではありません。
たとえば、期待リターンが3%の投資対象Aと期待リターンが4%の投資対象Bと期待リターンが5%の投資対象Cがあったとします。
これらA,B,Cを均等に組み合わせて投資すると、期待リターンは平均の4%になります。
一方で、リスクはA,B,Cそれぞれの持つリスクの大きさを平均したものより”必ず”小さくなるのです。

組み合わせることで、リターンは平均を維持したままリスクだけ下げられるという投資家にとっては都合の良いことが実現できるのが、分散投資の最大のメリットです。

どの程度リスクが低減できるかは、
相関係数という別の指標によって変わってきますし、時代によっても大きく異なります。
確かに、現在のように世界的な低金利局面では分散投資効果が小さくなっているのも事実ではあります。
それでも、ギャンブルのような投資ではなく、リスクをコントロールしながら効率的な資産運用に取り組むためには、分散投資は欠くことができません。

2018年の投資に対する考え方

2017年の株式市場は日本やアメリカだけではなく、新興国も含め世界各国で上昇。
アメリカのNYダウは何度も過去最高値を更新しました。
他にも、金価格も円建てでは堅調に上昇し、
原油も年末には約2年半ぶりの高値に上昇するなど商品市場も全般的に順調でした。
さらに大幅に高騰し注目を集めたのは仮想通貨です。
代表的なビットコインは1年間で約20倍になりました。
為替市場も比較的安定していたので、日本の投資家であればほとんどの人が
リターンを得られた年だったように思います。

私がアドバイスさせて頂いているお客様も
投資した時期やリスクの取り方によってリターンの程度に差はありますが、
株式を中心に投資しているので、
全員が運用資産の評価額を増やすことができた1年でした。

もちろん、最悪の事態も想定して対処可能なリスクの程度に合わせた
資金の大きさでしか投資していませんので、
無理なリスクを取っているわけではありませんし、
ビットコインのように適正な価値が判断できないマネーゲームに
興じた結果ではありません。

短期的な価格変動を受け入れ、将来的に成長していく可能性の高い資産へ
投資しているのですから、お金が増えるのはある意味当然の結果とも言えます。

2018年については昨年ほどうまくいかない1年になるかもしれません。
先進国の金融引き締め政策、北朝鮮などの地政学リスク、
割高な資産の価格調整などリスク要因が増えてきているからです。
しかしながら、もし市場環境が変わっても資産運用の基本スタンスを
変える必要はありません。分散投資を徹底しながらリスク管理をしっかり行うことで、
どのような環境変化にも対応できると考えています。

市場環境が好調な時は誰でもリターンが得られますが、
調整局面での対応によってその後の投資成果は大きく変わってきます。
今年はより一層リスクコントロールの重要性が高まる1年になるかもしれません。

 

金融庁も指摘!日本の投資信託の問題点

金融庁が10月25日に平成28事務年度の金融レポートを発表しました。
金融レポートは、金融庁が何を目指すのかが明確に示されており、 現状の金融サービスについての問題点も確認できます。
今回はその中の投資信託に関連する指摘のうち4つのポイントをまとめます。

1.販売手数料の高い商品・サービスの販売シェアが増えている

銀行における投資信託の販売手数料の動向を見ると、 2016年度に販売された投資信託全体の平均販売手数料は前年度に比べて上昇している。
販売額上位5商品は販売手数料3%以上の商品の割合が高まっていることから、 手数料の高い商品にシフトしつつあることが窺われると言及しています。
また、前年度の金融レポートでも問題点を指摘されていたラップ型運用サービスの残高・件数も伸びています。
投資信託の販売手数料について、ノーロード(販売手数料なし)の投資信託が増えているという報道も多いので全体として下がっていると考えていると大きな間違いのようです。

2.運用成績の高いアクティブ・ファンドが少ない

金融庁が過去10年以上存続している株式アクティブ運用投資信託281本の信託報酬控除後のリターンについて分析を行った結果、
過去10年間の平均リターンは年率1.36%であり、 全体の約3分の1の商品のリターンがマイナスとなっている状況でした。
また、インデックス運用投資信託と比較しても、71%はインデックス運用投資信託を下回っているというものでした。
コストが高くてもそれを大きく上回るリターンが得られれば、問題ではないかもしれませんが、
リターンが得られていないにもかかわらずコストが高いとすればそれは大きな問題です。

3.インデックス運用商品のシェアが低い

米国では長期の資産形成に適した低コストのインデックス運用投資信託の割合が年々増加しています。
特に規模の大きな投資信託においてインデックスタイプの割合が上昇しており、個人の資産形成を担う中核的な商品の低コスト化も進んでいます。
一方、日本では足下でインデックス運用投資信託の割合が上昇傾向にあるものの、 米国に比べるとその上昇スピードはかなり穏やかです。

4.販売会社と運用会社の間の結びつきが強く、顧客の利益が優先されていない

同一のグループ内に銀行や証券会社といった販売会社を持つ大手運用会社では、販売会社との関係性を重視し、
販売会社の販売しやすい商品を組成し提供してきました。
同一グループ内に銀行や証券会社といった販売会社を持つ大手運用会社5社が2014年に設定した公募株式投資信託を分析し、
コストに見合ったパフォーマンスが上がっているとは言い難いとも指摘しています。

金融庁の方と直接話をする機会がありますので、 本気で改革を進めようと取り組まれていることを私は実感していますが、
金融機関はそれほど簡単に変われないと思います。
やはり、金融機関の変化に期待するよりも、投資家が賢くなっていくしかないですし、 賢くなってようやく金融機関も変わるのだと私は思います。
金融レポートは金融庁のHPで公表されていますので、興味のある方は直接ご覧ください。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/j4ZoTHrM/

“法定相続情報証明制度”で相続手続きは楽になるか

今年の5月から“法定相続情報証明制度”が始まりました。

“法定相続情報証明制度”とは、
相続登記を促進するために新設されました。近年、相続登記をしないまま放置されている不動産が増加し、
これが所有者不明土地問題や空き家問題の一因として指摘されているからです。

一部には、相続手続きの際に戸籍や住民票を取り寄せる必要がなくなり、
法務局で相続関係人の証明書を作成してくれるようになったと誤解されているケースが散見されます。
しかし、“法定相続情報証明制度”とは法務局が証明書を作成してくれるわけではなく、
相続人やその代理人が作成した書類について法務局が内容を証明してくれる制度です。

したがって、これまでと同様に亡くなられた被相続人が生まれてから亡くなるまでに住んでいた市区町村で
戸籍謄本や除籍謄本、住民票を集めて回らなくてはいけません。
集めた情報を基に親族図等の法定相続情報一覧図を作成すれば、
法務局が内容を確認し証明してくれるようになります。
つまり、相続手続きで一番負担が大きいと言われている謄本集めの作業はこれからも必要なのです。

一方で便利になる部分もあります。
これまでは金融機関での名義変更手続きなどに、
その都度全ての謄本など必要書類を持参して手続きを依頼する必要がありました。
金融機関によって提出を求める書類が異なることはよくあります(これにも相応の理由があるのですが、これは別の機会にお伝えします)ので、
何度も役所や金融機関の窓口へ足を運ぶケースも多くありましたが、この必要性は無くなりそうです。

実は、新制度によって最も恩恵を受けるのは金融機関だと私は感じてます。
金融機関の担当者も一部のベテランを除いて相続手続きについてよく分かっていません。
私も銀行員時代に相続手続きを何度も経験しましたが、
過去の謄本を遡って相続人を特定していく作業は時間もかかるし、大変だった記憶があります。
この制度創設のニュースを聞いたときに一番最初に思ったのは、
法務局が作成した証明書を持参してくれたら銀行の相続手続きはどれほど楽になるだろうということでした。

高齢化の進展に伴い、相続手続きは確実に増加していきます。
将来的には、行政手続きの効率化のためにも個人番号(マイナンバー)との連携などにより
謄本集めの作業も不要になることに期待したいですが、
まずは法務局が発行する証明書により、銀行口座の名義書き換えなどの手間が大幅に省略できるメリットは有難いことだと思います。

制度の詳細については、法務省の以下のサイトで確認できます。
http://mail.omc9.com/l/01XqS2/LabKp3QN/

外貨建ての資産運用商品が不必要な理由

銀行や証券会社、保険会社など金融機関は、どこも資産分散の必要性を訴えて外貨建て商品の利用をお勧めしてきます。
具体的には、外貨預金や海外債券、外貨建て投資信託、外貨建て保険などです。

しかし、多くの一般生活者にとってこれらの外貨建て商品は必要ありません。

人口減少社会の到来や高齢化の進行、財政状況の悪化やグローバルな経済取引の進展を背景に個人が国内資産だけでなく海外資産を保有する必要性が高まっていることは誰もが認めるところだと思います。
私も資産価値を守っていくためにも国際分散投資が必要だと考えています。

金融機関もこのような理由から海外資産を保有する必要性を訴え、様々な外貨建て商品での運用を提案してきます。
特に、最近は外貨建て保険での運用提案に力を入れているようです。

金融機関の立場からすると、外貨建て商品は円建ての商品に比べて利回りが高く見えるため金融に詳しくない一般の利用者には販売しやすく、商品に含まれる手数料も大きいため、収益拡大にもつながります。そのためにも熱心に営業活動を展開しています。

しかし、生活者の立場からすれば、できるだけ低コストで資産の分散を出来た方が良いはずです。そのためには、コストの高い外貨建ての商品を利用しなくても、他に選択肢があります。
例えば、円建てで海外資産に投資するインデックス・ファンドを使えば、為替手数料の負担もほぼありませんし、運用コストもかなり低くなります。

仮に将来的に円安が進めば、円建ての運用であっても投資した商品の価格自体がその分上昇するため、外貨建ての商品を利用しなくても同じ運用成果が得られます。

金融機関はこのような投資を勧めてもほとんど手数料が稼げないので教えてくれませんが、ある程度の金融リテラシーを備えた多くの人が利用している方法です。

将来は海外に移住する予定があるような一部の人を除けば外貨で資金を使うケースはほとんどないわけで、それだったら円建ての運用商品を使って国際分散投資に取り組めば、国内資産だけに集中させず海外資産へも分散したいという目的は果たせるのです。

唯一、私が外貨建ての運用商品の中でもお勧めすることがあるのは、海外ETF(上場投資信託)への投資です。
0.1%単位まで徹底的に運用コストの削減にこだわる場合や米国市場の多様な商品ラインナップから商品を選びたいと考えるお客様に対しては、海外ETFを使った資産運用をサポートしていますが、手続きや資産管理の負担が大きくなることを考えると、多くの一般の生活者にとっては海外ETFも必要ないと考えます。

効率的な資産運用に取り組むのであれば、海外資産を持つ必要はありますが、外貨は持つ必要がありません。